この記事では、「超大作の特注念珠」の制作工程について書いていきます。
最初から読みたいというかたは、こちらもご覧ください。

前回は、試行錯誤してイタラカという角張った玉を切り出すところまで書きました。使用したエゾヤマザクラについてもう少し書きます。

使用素材

御希望は、せっかくなら北海道の木で、種類は色々混ざっても自由にということでした。できれば色の濃いめの気がお好きと。

北国には、それほど木肌が濃い木はありません。使えそうなのは、クルミや、エンジュ。こちらでエンジュというと、イヌエンジュのことで、本州のエンジュとは正確には少し種類が違うそうです。

エンジュの木は、手元にある程度あるのですが、木目のせいなのか、なぜか挽くときに芯がブレやすく、あまり精度良く作れません。

色でいうと白っぽくはなりますが、タモの木が良いんじゃないかと思いました。

丸玉の時は作りやすかったのですが、イラタカ玉の角の部分がシャープに仕上がりません。

色々試しているうちに、一番しっくりきたのが、エゾヤマザクラでした。

素挽きの状態では白っぽいですが、仕上げにニスを塗ります。

仕上げ剤

一般的に大量生産されている木玉はウレタン塗装のようなものかと思います。

塗りつぶすのではなくて、木の個性を生かせるものが良いなと思い、今までも色々な塗料やウッドワックスを試してきました。

見た目の仕上がりの善し悪し、作業のしやすさ、そういったものもありますが、せっかくなら、人工的な物よりも、なるべく自然由来のものがいいな思うようになったのです。

その方が、なんとなく手馴染みがよいというか、触っていて温かみが感じるような気がしているのです。

そこで、最近このんでよく使っているのは、セラックニスです。

これは、虫が植物を通じて分泌する樹脂で、天然由来のものです。化学塗料の念珠で体調を崩したというのは聞いたことがありませんが、長く触るものですから、経皮吸収されても人体に影響がないものがいいなという思いがあります。

木との相性がよく密着します、耐油性があり手の脂で溶けたりもしません。
これは、けっこう念珠に向いてる様思っています。

親玉はカバ

それぞれに親玉(他の玉よりも一回り大きな玉)を付けます。

少し白っぽいのがおわかりいただけるでしょうか。材料はカバの木を使っています。エゾヤマザクラはよかったのですが、打合せを進めていく中で大型化してしまい、材料の関係上、この直径の玉をとることが出来なかったのです。

親子銀環

ベースが浄土宗型ですので、大小二つのリングを継いで房の部分に連結します。

「親子銀環」などと呼んでいます。

通常、当店では、本物のスターリングシルバー製のものをつかいますが、特大サイズのためご用意できません。そこで、ほどよい大きさのステンレス製リングを用意し、これを一度切って溶接し繋いで使います。

写真をよく見ていただくとわかると思いますが、親玉に対してこれくらいの直径が必要になります。浄土宗型は、親玉の下で結び目を出すように止めますので、玉を繰っていくときに、リングはするすると下に落ちるようにしなければなりません。リングが小さすぎると、親玉が引っかかって、上がってきてしまいます。

弟子玉

ここで一つ、疑問が浮かびまして、最初にいただいたイラストには、浄名玉の指示は無かったのです。

軸足の配列になっている天台宗は浄名玉がありません。基本設計になっている浄土宗型では、この位置に浄名玉が入ります。日蓮宗型にも浄名玉はつきますが、数取りがつくのは裏側ですので、この房が裏とみれば、無い方が自然です。

御希望を伺ったところ、入れて欲しいとのことでした。
その結果、写真のような配列になっています。

細かいことを言えば、真言宗的には浄名玉の下は「叶結び」という結び目をいれるのですが、全体の状況から判断して、つゆ結びの方が自然です。

平玉が20、丸玉10個で高さが合うように調整します。
単純そうに見えて実は、これが非常に難しかったです。

主玉と違って、とても細かい作業になります。厚さ約4mmの平玉に対して、8.6mmの丸玉を繋ぐと全然高さが合いません。

丸玉は1mm以下の微調整をして、誤差の範囲を7.8~8.2mmくらいにして合せます。

房は、ぱっとみ普通の頭房に見えますが、一般的なサイズは2.5匁という大きさですが、こちらは一回り大きな4匁です。

大きさ

最初は、普通に使える範囲内で、試作してみたのですが、御希望の主玉の大きさよりはかなり小さくなりました。御希望の18~20mmくらいの大きさにすると、「かなり大きくなってしまいますが・・」とお話しをしていたものの、実物を見てびっくりされるほど、大きくなってしまいました。

今までの写真では比較するものが無くてわかるずらかったと思いますが、一般的な念珠と比べた写真がこちらです。

びっくりするでしょう!

本当に大きいんです。

まとめ

なんだかんだと、10ヶ月ほどお待たせしてしました。

その間、毎日この作業ばかりしていたわけではないのですが、機械の調整、試行錯誤に多くの時間を割き、本当に良い勉強をさせていただことに感謝しております。

「勉強させていただいた」というのは、言葉の綾ではなくて、細かいことを言えば、この間に実に様々な気づきがあり、技術的には飛躍的に進歩しました。

途中で紹介した大失敗で機械を壊してしまったこと意外にも、小さな故障や怪我は数しれず、試し挽きで潰した大量の材料、それでも、その代償が惜しくないほどの収穫があったのです。

この経験は、今後の商売形態が変わるくらいの大きなものです。

きっと、この経験を通じて革新した技術は、皆様にも還元していることと思いますので、どうぞ、お楽しみにしていてください。

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