木の玉、石の玉

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念珠の玉には、様々な素材があります。

代表的なものを大きくわけて、「木の玉」と「石の玉」がありますね。

その他、琥珀、珊瑚、貝、骨など、稀少で珍しいものや高級なものもありますが、割合でいうと少ないので、ここでは木と石についてお話しします。

琥珀については以前記事にしたことがあるので、こちらもご覧ください。

琥珀(こはく)ってなに? 琥珀の数珠はお高い。

木の玉

多く普及しているのは、黒檀(こくたん)、紫檀(したん)、鉄刀木(たがやさん)等のいわゆる「唐木(からき)」と呼ばれているものです。

これらは、昔から日本でも和室の造作に使われたり、仏壇の材料、その他、高級な調度品にも使われているため、なじみがあるものです。

楽器を演奏する人なら、バイオリン、ギターの部品、木管楽器の材料としてもエボニー、ローズウッドなどの名前で聞いたことがあるかもしれません。

黒檀

唐木の中でも代表的なもので、黒檀に注目して見ましょう。

近年は事情が変わってきて、「コクタン」といっても、その言葉すら通じなくなってきました。和室の床柱なんかを気にする機会も少なく、黒檀製品に触れたことがない人も多いのでしょう。

念珠を選ぶ際に、現物を手に取っても「え?これは木なんですか?」という方もいるくらいです。

実は、黒檀という名前の木があるわけではなく、木肌が黒くなる木のことを総称して黒檀と呼んでいるようです。

正式に、この木は黒檀に含まれますか?どうなんですか?ということになっても、国際基準等が定められているわけではないので、なんとも言えません。

念珠だけの話では無く一般的に「エボニー」と言えばカキノキ科の木がほとんどだと思いますが、アフリカンブラッグウッドなんかは、とても質感がよく、楽器でも多く使われていますが、これはマメ科の木です。

「黒檀」の範囲はとても広いのです。

黒檀の念珠

念珠限定の話になりますと、また特殊な事情があります。

単に「黒檀の念珠をください」と言った場合、テカテカに塗装された、真っ黒の木玉がでてきます。

僕もいまだに、これが正式に何の木なのかはわかりません。ただ、そのように分類された材料を仕入れているだけで、ひょっとしたら、入荷時期によって、芯の木は1種類じゃないかもしれません。

それくらい、「素材のあじを生かさない」とでもいいましょうか。バッチリ硬質な塗装がされています。

黒檀の念珠の話題に興味があるかたは、こちらの記事もどうぞ。

黒檀の表面仕上げの話。今日は天台平玉を使って。

縞黒檀

念珠の世界で黒檀のバリエーションと言えば、「縞黒檀」というのがあります。

なぜか、縞黒檀になると、素挽きといって、塗装していないものが標準仕様になります。塗装していない分、安いのか?というと、そうでもなくて逆に高いことが多いです。

素挽きになると、素材がある程度良い状態であることがもとめられ、仕上げの磨きにも手間がかかりますので、割高になるのです。

真っ黒ではなく、名前の通り焦げ茶と黒の縞がうっすら見えます。

木の玉の仕上げ

黒檀を例に挙げてみましたが、どの素材をとっても、それぞれに奥深いです。

一言で、木の玉は何がいいとは言い切れない部分がありますが、木の中でもしっかり塗装されたものと、無塗装に近いものがあります。

さらに、当店では独自に、無塗装の木地をベースに、亜麻仁油、米ぬかロウ、天然素材のワックス、最近だとセラックニス仕上げにも凝っています。

仕上げ方によっても、特性は大きく変わってきます。

黒檀の項で、最初に紹介した、しっかり塗装されたものというのは、一番一般的で、これは、10年使ってもほとんど見た目に変化しません。

経年劣化がみられないというのは、メリットと見ることもできますが、「木を楽しむ」観点では、残念な気がします。そういう意味で、うちでは一応取り扱いはありますが、積極的にオススメはしていません。

木の魅力を引き出す仕上げということで、現在もいろいろな方法を模索中です。

いまのところ、僕の中でベストだと感じているのは、セラックニス仕上げです。

無塗装よりは濃い色になりますが、見た目に木肌の個性が残ります。油よりも塗膜がつき、適度な耐久性。

まだ、この使用で長年使ってくださったという実績がないので、将来どうかはなんとも言えませんが、いまのところ、オススメしている方法です。

木の念珠の魅力

今後は、北海道産の木を使った念珠をもっと作っていきたいと考えています。
その為に長年かけてノウハウを蓄積してきました。

木の念珠の何が良いかといっても、種類や仕上げによって一概には言えません。

そんなに色々あるのか!と思った方もいるかもしれませんが、そんなことを考えている念珠屋さんはたぶん多くなく、亜麻仁油仕上げのたまに興味があるんですすけど、なんていう希望を相手にしてくれるのは、全国でうちくらいでしょうね。笑

例えば黒檀なら、塗装したものか、縞黒檀かの2択。木の念珠といっても、決まった仕上げのなかから、数種類選べるくらいが普通です。

木の念珠の魅力を最大限に味わうには、「経年劣化」ではなくて、「経年変化」を楽しめるという所にあるかもしれませんね。

一般的なしっかり塗装されたものは、たとえば下地がプラスチックでも、それほど質感が変わりません。そういう意味では木の魅力が無くなっているということは感じます。

なんでそのようなものが一番普及したかといえば、黒檀などの名前が通った呼び名のまま、極限までコストを下げて安く売った大量生産の結果だと思います。

「黒檀がこんな値段で売ってるなんて信じられない!」って言われたことがありますが、その方が普通の感覚です。

あとは、一般的に言われるところで、触ったときの暖かさ、そして軽さ。

石に比べて、その素材のやらかさや、軽さから、念珠の糸が切れず楽長持ちするということもあります。

それらにしても、質の良い黒檀や生命樹などは、かなりの重量がありますし、必ずしもその限りではありません。

石の玉

それでは、石の玉についてお話ししましょう。

石の玉に関しては、書き始めると、木の玉の項より長くなってしまうので、ある程度のところで折り合いを付けてほどほどにしておきます。

水晶

石の玉の代表選手ということで、水晶を取り上げてみましょう。

本水晶と呼ばれているものは無色透明が基本で、ランクによっては、不純物が混ざったり、クラックが見える場合もあります。

水晶については、動画も上げていますので、興味がある方はどうぞ。

水晶のバリエーション

水晶も色々あって、透明意外にも、紫水晶、黄水晶、茶水晶等色々あります。

黄色は天然のもありますが現在ほとんど流通しておらず、人工的に黄色に変化させたものです。石自体は本物です。

ブルークォーツやグリーンクォーツと呼ばれているものは、紫水晶(アメシスト)を素材にして色を変える処理をします。

もともと高価な紫水晶に処理する手間がかかりますので、さらに値段は高くなります。

石の値段

本物かどうか?ということを気にする方が多いですが、実はこれ、とても難しい問題です。

さらに踏み込んで興味がある方は、こちらもご覧ください。

その数珠の玉って、本物ですか?

玉石混淆という四字熟語がありますね。

これは、良いものと悪いもの、賢者と愚者が入り交じっているようなことの喩えでありますが、念珠の世界では、本当に文字通り、「玉」と「石」が入り交じっているという状況があります。

高いものが良いわけでもないので、注意したいところです。

それぞれ、お求めになる方によって、その方にとって価値があるものというのは、変わってきますので、必ずしも値段と比例していません。

同じ材料の同じように見える形でも、お店によっては随分値段に差があります。

それぞれに事情があってその値段に収まっているわけですが、その事情が必ずしもお客様本位のものとは限りません。売る側の都合でそのようにしていることも多いです。

そのあたりは、あげれば切りが無いですし、数年前の情報を語っても意味がありません。原材料の事情などは、国際情勢によっても刻々と変化します。

石の魅力

無限とも思える多彩な色味が楽しめることが、一番の魅力でしょう。

そして、ある程度以上硬度のあるものは、何十年経っても、その美しさを維持します。

単純に、「木は変化が楽しめるし、石は変わらない」とばっさり言い切ってしまう人もいますが、そう話は単純ではありません。

先に紹介したように、世に出回っている多くの木玉は、変化など感じられないように厚塗りされたものが多いです。

逆に、石でも、柔らかいものは条件によってかなり変化するものもあります。

ただし、木の変化はツヤがましてきますが、石の場合は、表面のツヤが落ちてきますので、やはり「劣化」と感じてしまうのが、正直な印象です。

どんな石が劣化しやすいかは、それぞれにご説明できますが、それが1年で分かる人もいれば、10年使っても変わりない人もいます。使い方、頻度、手の汗の量によっては、まったく環境がかわります。

ここでもやはり、あなたの場合は・・という条件付になるので、その都度相談していただくのが良いかと思います。

石のデメリット

石については、デメリットも少し書いておきましょう。

見た目にたくさんのバリエーションが楽しめる石ですが、いくつかデメリットもあります。

天然石自体がブームとなって以来、情報がカオスです。

何が良いものか、一般には非常に分かりずらい状態にあります。

たとえば、天然石ショップで、高価な虎目石の念珠が売られていても、それは、天然石屋さん目線では上質な虎目石かもしれませんが、念珠屋としては、アクセサリー用の材料を念珠風の見た目に繋いだだけの、非常に粗悪な作りということも多々あります。

おそらく天然石屋さんに悪気はなく、ブレスレットやネックレスと同じように、バリエーションの一つとして、質の良い天然石を念珠の形にしているんでしょうけど、仏教法具として実用的に良いものかとなると、話は違ってきます。

もちろん、天然石屋さんの念珠が全てダメということはありませんし、建前上念珠の方が専門のように見せかけていながら、粗悪なものを扱っている場合もあります。

目利きという面では、ネットで調べたりしても、現物をどれだけ見たかと言うこともありますし、もっというと、実際に使ったり作ったりしていないと、何が悪いのか、見た目にはわかりずらい部分も多いです。

なので、好みの種類で、予算内で、本当に良いものを掴めばいいのですが、それは専門家に相談せずに、ネットでポチってしまう時代には難しいことですね。

当たり前ですが、販売サイトの説明文に、悪いものだと書いてることはありませんので。

あとは、特に大玉の場合。

男性用の略式などに多いですが、大きな玉になると、非常に重いです。

重いのが好きかどうかは、好みなので、デメリットではありません。
僕も個人的には重厚感がある重いのも好きです。

ただ、本気で使い倒す人にとっては、切れやすいという欠点はあります。

これは、単純に重たいので通している糸に負荷かがかかると言うこともありますし、大玉になると、テコの原理で、小玉よりも糸のテンションがキツくなります。そういった物理的な要因で、普通に使っていても、早めの糸の交換が必要になります。

ただこれも、年に数回の葬儀や法事に使うかどうかというレベルでは、ほとんど木にならない事かと思います。

お遍路や、日々のお寺参り、月々の法話会に参加しているなど、かなり頻度の高い方は気にした方が良いかもしれません。

それにしても、大きな玉はある程度値段もしますし、相対的に修理代はそれほど高く感じず、しかたないと思えるかもしれませんね。

一般的に女性用とされているくらいの小玉でしたら、ほとんど影響しないかとおもいます。

おわりに

念珠の材料も、木の念珠、石の念珠、その他いろいろありますが、多少イメージを掴んでいただけたでしょうか。

どちらも、深掘りすればきりが無いのですが、一般の方に関しては、直感で好きな方を使うのが良いかと思います。

僧侶は、修行中は榧しか使えないとか、装束用には色が決まっているなどありますが、それらは、それぞれのルールの範囲で使うしかありません。

木と石は、どちらがいいですか?ということも聞かれることがありますが、優劣はありませんし、一般の方の使用頻度ですと、その方のお好みを優先してもらうほうが良いと思います。それ以外の要素は、ほとんど場合、実用的に影響のあることは少ないです。

もっと詳しく材料について相談したいというかたは、修理や購入の際に、遠慮無くおたずねください。

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