みんなが知りたい念珠価格の裏側

念珠や仏具を取り扱っていると、「値段が有って無いよなもの」と言われることがしばしばあります。男性に多いです。
また、それは対照的に、「定価はいくらなんですか?何割引きですか?」と訊かれることもあります。女性に多いです。

たしかに、お買い物をするときに価格というのは重要な項目の一つであることは間違いありません。とにかく気に入ったので金ならいくらでも出す、という場合もないとは言いませんが、大抵の買い物をするときには値段は気になるものです。しかも、損をしたくはありませんので、おなじ物ならより安いお店を選ぶのは当然のことと言えましょう。

少し考えてみてください、定価とは何でしょうか。「メーカー希望小売価格」と書かれることもあります。
うちの場合でいうと、僕がメーカーでもあり小売店でもあります。極端な話、「メーカー希望小売価格100万円の念珠が、99%オフでなんと1万円!」と言ってもまったく嘘はありません。希望価格と実売価格を表示してるだけですから。もちろん、製造販売を一貫してやる者にとってこのような数字に何の意味もありませんので、このような表示はうちではしません。冒頭に書いた「値段が有って無いよなもの」は、そういう意味では当たっています。しかし、気分で適当につけるわけにいきませんので、基本的には、念珠に関して言えば材料原価に独自に導き出した掛け率をのせ、仕立て代の手間賃を計算します。そのうえで、競合店より高い場合や、原材料採掘量や流通事情が変わり適正な価格にならない場合には、その商品ごとに微調整をします。仏壇や、線香はメーカーで定価を設定している場合もあり、通常の物流同様、「卸価格」が存在します。たとえば、うちのお香は京都の松栄堂さんというところがメインです。こちらでは、定価が決まっており、基本的には値引きなしで売って欲しいという約束でお取引しています。小売店どうしの値引き合戦でどんどん値崩れして製造元の卸価格を叩くようなことになれば、メーカーのイメージダウンのみならず、仕事の質、お香の質を下げざるをえなくなります。多くの業界で見られる失敗だと思います。僕は松栄堂さんのお香の品質と、そういう姿勢に惚れ込んでお取引させてもらっています。

数珠業界と言えば「京都数珠製造卸協同組合」が有名で、全国的にこのタグが付いたものを仕入れて売っている小売店も多いでしょう。うちの場合、基本的には自前で仕立てていますが、ほとんど売れる機会がないので材料を揃えるにはロスが多いような特殊な念珠等、状況によっては組合加盟店から完成品を仕入れる場合もあります。しかし、定価は指示されていません。ところが、「▲▲%割引」という売り方をしている業者には疑問を感じます。

お客様目線で、損せずに良い念珠を選ぶのはとても難しいです。たとえば、適当な定価設定をして割引を大きく見せるような売り方はいかがなものかと思いますが、割引後の価格は比較的良心的で、妥当な金額という業者もいます。仏具業界は安すぎると有り難くないという、独特の現象もあって、真面目そうに見えて不適正に高い価格で売っている、いわゆるボッタクリ業者もいます。また、個人の方が買う場合と、お寺を名乗って買う場合と価格が違う業者もいます。お店選びだけでも大変なうえ、石の名前と値段だけを比べても、石自体の質もちがえば加工も違います。その後の仕立て方も、「わからないなりに頑張って考えたのかな?」と思ってしまうようなものまであります。相場がわからなくなり、疑心暗鬼になってしまうのは当然です。

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長岡念珠店は、「適正価格」こだわっています。これは、単に安いという意味ではありません。品物に対して、適正と思われる価格を多方面から検討して設定しています。対面販売になると「ちょっとくらい勉強しなさいよ!」と言われることも多いですが、それなりの価格の念珠やまとめ買い等の時には端数くらいオマケすることはあっても、「全品3割引きです」「今なら半額です」などという売り方はしません。そして、適正にこだわってつけた価格は、多くの場合、同等品と比べると、全国でも最低価格に近いことが多いです。(スーパーの特売卵のように、一部商品を客寄せに投げ売りしている業者もいますので、すべての商品が必ず最安値とは言いません)。当然、お坊さんでも一般の方でも、相手によって値段を変えるようなことはしません。
そして、お買い物の際は十分な情報提供と、もちろんすぐに切れたり緩んだりがあれば責任をもって直させてもらいます。商売が上手で一つも商品知識がなくても「モノ」を持たせればなんでも綺麗に売りさばける人もいます。それはそれでたいしたものだと思いますが、お客様にとって最良の選択をできるご縁にはならないように思います。

その結果、「長岡に頼めば間違いない」と値段も聞かずに頼んでくださるお客さんが増えてきました。逆に価格を指定して「1万円くらいの予算で贈り物に使いたいのでお任せで」というご注文も増えてきました。これは、価格以上の買い物ができるという安心感と、状況にあったものを選んでくれるセンスを見込んでくれている言葉だと思い、大変うれしく受け止めています。
こんな売り方をしていては、ハッタリ競争の激しいネットショップでは、ぜんぜん売れませんね。でも、僕は10年後も、20年後もできればこの商売を続けたいと思っていますので、本当に良い買い物をしたいお客様に少しずつでも出逢えればいいと思っているのです。

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