代々受け継がれて

先日、念珠修理のご依頼があった時のことです。
見るとずいぶんくたびれた様子の男性もので、お話を伺うと、おじい様が使っていたものだということでした。
新しいものを買い替えることも検討されましたが、単に修理ではなく、アップグレードをおすすめしたところ、そちらの選択をされました。具体的にはこうです。

主玉の唐木(紫檀の一種のようですが詳細は不明)は使い込まれてとても風合いが良いのでそのまま生かし、プラスチックやハリガラスの道具部分(親玉、ボサ、二天玉)を茶水晶に付け替えました。
房は、ちょうど入荷しておりました、ちょっと珍しい金糸入りの紺色を気に入っていただけたようで、茶水晶にもよくなじむ為こちらで仕立てました。もちろん正絹です。

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房を選ぶ際には、道具が色付きの場合はその色に合わせ、本水晶など透明な場合は、主玉に合わせると、違和感なくコーディネートできます。もちろんお好みであえて色を変えて個性的な組み合わせにすることもできます。なんだかファッションの様ですが、実用性に加えて嗜好性も加わって進化してきたのが、念珠の歴史です。きっと、昔の人達も、いろんな工夫をして好みの形、流行りの色を探ってきたものと思われます。

出来上がった念珠を見て、大変感激していただきました。よくよくお話を聞けば、この念珠を残したおじい様も、そのまたお父さんから譲り受けたものらしいということでした。
ご先祖が代々合掌にかけてきた念珠は、まさに命のリレーのバトンのようですね。
末永く使っていただければ、嬉しく思います。