玉穴の加工

通常、念珠の材料は加工済のものを仕入れて、当店では房つけ等の仕立てをしています。
しかし、場合によっては、穴が小さすぎたり、面取りが悪く、特定の玉のところだけ非常に切れやすいということもありますので、加工しなければいけない場合があります。

今回の材料は、ラピスラズリです。
天然石の中でも貴石というより、宝石というイメージが強い方もいるかもしれません。
石に穴をあける際に、電動ドリルなどでやろうとする方がいますが、鉄鋼用ビットを使ってもうまくいきません。
どうするかというと、ミニルーターにダイアモンド蒸着のビットを付けて回していきます。
回転数は毎分2万回にもなりますので、とてつもない摩擦熱が出ます。そのまま素手で持っていると玉の外側まで熱が伝わりやけどするほどです。この摩擦熱が悪さをしてビットのダイアモンドがはがれてしまいますので、水で冷却しながらの作業となります。

もし、自分で道具をそろえてチャレンジしてみたいという方がいれば、ぜひ、業務用のルーターをおすすめします。
いわゆるホビー用では、15分くらいの使用しか想定していないため、すぐにモーターが焼けてしまいます。また、両手を使っての作業となりますので、フットスイッチはぜひそろえることをおすすめします。

素手で持つと危ない・・(実際に何度も痛い思いしています)のですが、手袋やバイスやプライヤーなどを工夫して掴めるように考えたこともありますが微妙な動きをするのが難しく、摩擦熱の感触が分かりずらかったり、先端ビットが材料に食いついて玉が飛んでしまう際に、手なら瞬間的に離せますが、道具越しでは大事な材料を割ってしまいます。
いろいろ試した結果、現在は素手で作業しています。

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初めは透明だった冷却用の水も、いくつか削るとすぐに石の粉で真っ白になっていきます。
ラピスラズリはモース硬度5~6と言われており、水晶より柔らかく、ガラスと同じくらいということになります。
ビットの状態さえ良ければ、比較的に加工しやすい材料です。

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加工済のラピスラズリです。理想的な穴になりました。
簡単そうに見えますが、これが結構な難作業なんです。
研磨の粉が残りますので、乾燥後に穴の掃除をします。

どんな玉でもどんな穴でも、とりあえず輪にする方法はあり、ぱっと見ではほとんどわかりません。
しかし、こうした地味なところを丁寧につくることで念珠の使い心地が変わってきます。今回のラピスラズリも色味は大変綺麗でグレードの高いものですが、穴がイマイチでしたので、直して立派な念珠となっていきます。