エゾヤマザクラの念珠ができるまで

念珠店開業と最初の苦労
私が念珠店を始めたのは、2009年頃のことです。 それまでは仏具店で営業をしていたものの、独立して念珠専門のお店を構えた当初は、知名度も信用もまったくなく、どんなに高品質の念珠を作っても、なかなか振り向いてもらえませんでした。
お寺の支援と、越えられない「京都ブランド」
それでも、誠実に仕事を続けていくうちに、親しくしていたお寺の住職様方が声をかけてくださり、法要の際にお寺で販売させてもらえるようになりました。 住職様のお墨付きとなれば、檀家さんたちの信用も得られるかと思いきや、現実はそう甘くはありませんでした。
当時よく耳にしたのは、「京都でちゃんとしたものを買おうと思ってるんです」「京都でいい念珠を買ったんですよ」「え、京都から来たお店じゃないの?あら、違うんですね」といった言葉。 「念珠といえば京都」というイメージが根強く、北海道の念珠屋はどうしても影が薄く感じられていたのです。
「北海道ならでは」の念珠を目指して
今では、見えない工夫や購入前後のきめ細やかな対応を通じて、京都の老舗念珠店にも負けないサービスを提供していると自負しています。 けれども当時は、「京都と同じ素材を使い、どんなに丁寧に仕上げても、京都を超えることはできない」と、どこか諦めのような気持ちもありました。
そこで考えたのが、「北海道でしか手に入らない念珠を作ろう」ということ。 できれば、京都の方が「北海道から取り寄せたい」と思うような念珠を目指したい――そんな想いから、北海道産の素材探しが始まりました。
素材探しの試行錯誤
天然石ではブラックシリカや十勝石など魅力的なものもありましたが、加工が難しかったり、安定供給が難しかったり。 エゾシカやトナカイの角も候補に挙がりましたが、高額になりやすいのが難点でした。
もっと現実的な素材として北海道産の木材に目を向けましたが、「北海道ならでは」にこだわると、なかなか選定が難しい状況でした。
シラカバとミズナラの挑戦
試行錯誤の末、最初にチャレンジしたのがシラカバ。 話題性があり、雑誌で紹介されたこともあって一定の人気は得られました。 けれども、長年使い込む中で現れてほしい“味わい”がなかなか出ず、私としてはまだ改良の余地があると感じていました。
次に商品化したのはミズナラでした
こちらはテレビやラジオでも取り上げられ、一時的に多くの方に手に取っていただきました。 かつてウイスキーの樽材としてヨーロッパからも注目されていたほど、北海道のミズナラは品質が高く、生産も安定しています。 そのストーリー性も相まって、とても魅力的な素材になりました。
ただ、木目の力強さや荒々しさが際立つため、どちらかというと男性向けの印象が強かったのです。
出会い――エゾヤマザクラという素材
「もっと奥ゆかしく、品のある、まるで大和撫子のような素材はないだろうか」 そんな想いを胸に、探し続けてようやく出会ったのが、エゾヤマザクラでした。
エゾヤマザクラは、繊細で目の詰まった木肌が特徴で、しっとりとした滑らかな手触りがあります。 この素材で念珠玉を挽き、つや消しで仕上げると、凛とした美しさと優しさが共存するような、そんな念珠が生まれました。

北海道の桜の魅力を、手のひらに
全国的には桜と言えば、ソメイヨシノのような一面ピンクの華やかな景色を思い浮かべるかもしれません。 でも私たち北海道民にとって馴染み深いのはエゾヤマザクラ。 花が満開になる頃には、緑の葉も一緒に茂り、「葉桜」のような姿を見せてくれます。
この、気取らないけれど芯のある美しさ――まさに北海道民らしさを映し出しているようで、私はとても気に入っています。
エゾヤマザクラを使った商品は、男女問わずお使いいただける略式念珠や、ブレスレット型の念珠などをご用意しています。 その優しい肌ざわり、ぜひ一度、手に取って感じてみてください。




