水晶の数珠は、派手さでは他の天然石に負けます。色もなく、模様もありません。それでも、昔から数珠のいちばん格の高い素材とされてきました。(その理由は「水晶の数珠——なぜ「最上の珠」と呼ばれてきたのか」にまとめています。)
この記事では、もっと実際的な話をします。水晶の数珠を手に入れるとき、何に気をつければいいのか。そして、長く付き合うために知っておきたいことです。
「本水晶」「練り」「クリスタル」——表記のちがい
水晶の数珠を探すと、「本水晶」「天然水晶」「水晶(練り)」「クリスタル」など、似た表記が並びます。
このうち「練り」や「クリスタル」と書かれたものは、ガラスなどでつくられた人工の珠であることが多く、天然の水晶とは別物です。どちらが良い悪いではなく、価格も性質もちがう。そのことを知ったうえで選んでいただければと思います。
本物とガラス、どう見分けるか
よく「冷たいから本物」と言われます。たしかに水晶はガラスより熱を伝えやすく、手に取るとひんやりします。ただ、職人の実感としては、これはあまりあてになりません。熱の伝わり方に差があるのは本当ですが、そのちがいはわずかです。ガラスの珠と水晶の珠を同時に握り比べでもしないかぎり、一本だけ手に取って見分けるのは難しいと思います。
それよりも、目で見たほうが確かです。手がかりをいくつか挙げておきます。
- 珠の中に、ゆらゆらとした「うねり」が見えるなら、ほぼガラスと思ってよい
- ガラスには、丸い小さな気泡が入っていることがある
- 天然水晶には、小さな内包物(なかに閉じこめられた別の鉱物や、ひびのような模様)が見えることがある。極端に安いのに、ルーペで覗いても内包物ひとつない、という場合は、素材を確認したほうがいい
ただし、ガラスなら必ず見劣りする、というわけでもありません。「上ハリ」と呼ばれる質の高いガラスの珠は、水晶に負けないほど、ものによっては水晶よりもきれいです。実際、値段も、質のよくない水晶より高いことがあります。ガラスか水晶かは、良し悪しではなく、素材のちがいです。
とはいえ、最終的に確かなのは、お店にきちんと聞くことです。素材を正確に答えられるかどうかは、そのお店を信頼していいかを測る、いちばん簡単な物差しでもあります。
念珠の業界では、仕入れ先が知らずに卸したものを、小売店も悪気なくそのまま売っている、ということが珍しくありません。サイトの見た目が立派でも、誰が売っているのかよくわからないお店もあります。気になることがあれば、買う前に問い合わせてみてください。
水晶と長く付き合うために
硬くて、傷がつきにくい
水晶のモース硬度は七。一般的なガラス(五・五前後)より硬く、日常で触れる砂ぼこりの多くよりも硬い素材です。毎日繰っても表面に傷がつきにくく、長く使ってもきれいなまま保ちやすいのは、水晶の大きな長所です。
ただし、重く、割れることもある
一方で、水晶は天然石なので、木の珠にくらべるとずっしりと重みがあります。それが手に掛けたときの落ち着きにもなるのですが、重い珠は糸への負担も大きく、木の珠より糸が切れやすい傾向があります。(糸替えの目安は「数珠が切れたら、縁起が悪いのでしょうか?」に書きました。)
また、いくら硬いとはいえ、固い床に落としたり、強くぶつけたりすれば、欠けたり割れたりすることがあります。
くすんできたら、やわらかい布で
使っているうちに、「少し曇ってきたかな」と感じることがあります。水晶は硬いので、細かい傷で曇ることはあまりありません。多くは、手の脂が少しずつ表面に残っていくためです。
ときどき、やわらかい布で拭いてあげてください。それだけで、十分に透明感を保てます。
長岡念珠店の水晶について
天然石のお店では、星の数や「AAAAA(5A)」のように、品質にランクを付けて売っていることがあります。当店では、こうしたランク付けはしていません。
基準は一つです。透明度が高く、クラック(ひび)のない、自信を持ってお出しできるものだけを、水晶の数珠としてお届けしています。
ただ、使ううえではまったく支障がないのに、ルーペで覗くと微細なクラックや内包物が見つかる、という珠もあります。当店の基準には届かないけれど、品物としては十分に良い。そうしたものは「訳あり品」として、お手頃な価格でお出しすることがあります。
産地はブラジル産です。ヒマラヤ産や、山梨県などの国産の水晶は扱っていません。
水晶選びは、正直に言って難しいものです。ガラスなのか、プラスチックなのかさえ、見た目だけではわかりにくい。本物の水晶であっても、品質の差はものによって大きくちがいます。一生ものとして満足していただける水晶、という意味では、間違いのないものをお届けできると思っています。迷ったら、ぜひご相談ください。



