日蓮宗の念珠は、ひと目でそれとわかる形をしています。片方の端に房が二つ、もう片方に三つ。
この形には、ちゃんと意味があります。今回は、日蓮宗の念珠の形と意味、持ち方、そして選び方をまとめます。
形——百十四の珠でできている
日蓮宗ポータルサイトのQ&Aには、日蓮宗の数珠は「108の普通珠、4つの中珠、2つの大珠を繋ぎあわせたもの」と説明されています。合わせて百十四の珠です。
それぞれの珠には名前と意味があります。日蓮宗の寺院のブログ(妙好寺「お数珠・お念珠のなぜ②」)から整理すると、次のようになります。
- 主玉(おもだま)百八:煩悩の数
- 親珠(おやだま)二つ:左右の端にある大きな珠。「釈迦如来」と「多宝如来」をあらわす
- 四天珠(してんだま)四つ:小さな珠。四菩薩や四天王をあらわす
釈迦如来と多宝如来が並ぶのは、法華経の「見宝塔品(けんほうとうほん)」で、宝塔の中に二仏が並んで坐る場面を思わせます。二つの親珠を持つこと自体が、法華経の世界を手の中に持つことだ、と私は理解しています。
房——二つと三つ
日蓮宗の念珠の、いちばんわかりやすい特徴が房です。
一方の親珠には房が二つ、もう一方には三つ付いています。房が合わせて五本、しかも左右で数がちがう念珠は、ほかの宗派にはあまり見られません。一目で「あ、日蓮宗の念珠だ」とわかる形です。
また、日蓮宗の数珠には、僧侶が使う「装束数珠」と、信者と僧侶が日常に使う「勤行数珠」の二種類があります。宗門のQ&Aによれば、勤行数珠は房が丸く、菊房や玉房になっています。房の長さも、短房・中房・長房とあり、中房と長房は「ご祈祷をする僧侶が用いる数珠」とされています。在家の方がお求めになるなら、勤行数珠の短房が基本です。
持ち方
これも宗門のQ&Aから、要点をまとめます。
- ふだん:房を下にして、左手に二重に掛けて持つ
- お勤めや儀式のとき:親珠を中指の第一関節に掛け、数珠を一度ねじって(「あやにする」といいます)、そのまま両手を自然に合わせる。このとき、房が二つの側を右手、三つの側を左手にする
そしてもう一つ、はっきり書かれていることがあります。数珠を「こすって音を出しながら拝んだり、首にかけるのは好ましくありません」。
(余談ですが、昔の小説を読んでいると、数珠を首に掛けたり、激しく揉み鳴らしたりする場面がたくさん出てきます。そういう使われ方が実際にあったからこそ、宗門として作法を示しているのかもしれません。)
略式ではなく、本式を
日蓮宗では、僧侶だけでなく在家の方にも、本式の念珠を使うことがすすめられています。どの宗派でも使える略式数珠が便利なのはたしかですが、日蓮宗の檀家さんには、当店でも本式をおすすめしています。
なぜ日蓮宗では本式なのか。日蓮宗宗務院に問い合わせたときの回答や、他の宗派の方が日蓮宗の葬儀に参列するときの数珠については、「日蓮宗では略式数珠ではいけないの?」にまとめました。
素材について
宗門のQ&Aには、珠の材料として「香木・梅・黒檀・菩提樹・水晶・真珠・珊瑚・象牙・石など多種多様」が挙げられ、「昔から白水晶が最上の珠といわれます」とあります。そのうえで、一般の方には「自然木や木の実などあまり華美でないものが望ましい」とも添えられています。
長岡念珠店のおすすめ
略式の数珠なら、たくさんの素材の中から好きなものを組み合わせて作ることもできます。ところが日蓮宗の本式になると、じつは選べる幅がぐっと狭くなります。
何を選んだらよいかわからない、という方には、基本的に本梅などの木の珠をおすすめしています。年代を問わず、お寺や地域のちがいにも関係なく、どこへ持って行っても受け入れられやすいからです。
日蓮宗では、色や素材について「これはだめ」という決まりがあるわけではありません。ただ、先の宗門の言葉のとおり、華美なものは好まれない傾向があります。木の珠をすすめるのは、その点でも安心だからです。
男性用と女性用のちがいは、主に大きさです。数珠の大きさは「寸」で呼び分けられていて、一般には、女性は八寸(はっすん)、男性は尺(しゃく)か尺二(しゃくに)を使います。
ただ、日蓮宗の念珠は、両手を輪の中に入れて使うわけではありません。ですから、男性が八寸を使っても、使ううえでの不都合はありません。毎日のように手にする方の中には、扱いやすさから、男性でもあえて小ぶりの八寸を選ぶ方もいらっしゃいます。
もちろん、少しこだわって特別な一本をオーダーしたい、という方もいらっしゃるでしょう。日蓮宗の本式では難しいご依頼になることもありますが、できる限りお応えします。まずはご相談ください。
日蓮宗の念珠は、ほかの宗派とくらべて少し複雑で、最初は持ち方に戸惑う方も多いと思います。でも、二つの房が右手、三つの房が左手。それだけ覚えておけば、あとは自然に手が覚えていきます。房の数を指で確かめながら手を合わせる、その一瞬の確認も、お題目の前の小さな準備なのだと思います。
参考
- 日蓮宗ポータルサイト「仏教・仏事のQ&A 数珠」https://www.nichiren.or.jp/qa/juzu/
- 日蓮宗 妙好寺「お数珠・お念珠のなぜ②」https://temple.nichiren.or.jp/1041067-myodenmyoukouji/2020/09/id120/

