「念珠の学校オンライン」のチラシの裏

ここ数年ずっと考えていた、念珠作り教室のオンライン化、ようやく実現する運びとなりました。

新サービスについて詳しいことを知りたいという方は、↓こちらのリンクからご覧ください。

https://nagaokanenju.com/blog/archives/lp/school_of_nenju_online

この記事では、そもそも何のための教室か、なぜそこに至ったか、というお話をしたいと思います。

仕事って・・、働くって・・

僕は念珠屋を始めて10年とちょっとになります。

おかげさまで結構長く続いていますので、念珠屋を初めてから知り合った人の方が増えてきました。そうすると、前職はなんだったのか、どういう経緯で念珠屋になったのか知らない人も増えてきたのです。

その話は長くなるので、ここでは割愛しますが、数年前にしこたま書いたことがあるので、よほど暇な方はそちらの記事を読んでくだされば嬉しいです。

https://nagaokanenju.com/blog/archives/2180

とにかく、自分で商売を始めるまではサラリーマンでしたので、どんな仕事をしていたかということよりも、雇われているか経営者かということが何よりも大きな違いです。

サラリーマン時代は、とにかく大人になったら働くことは当たり前だと思っていたし、生活費を稼ぐためにも、そして、欲しいものを買うためにお金が必要だと考えていました。

そして、大きなポイントは、「自分の仕事の成果が社会貢献をして、その対価としてお金をもらっている」ということを理解していませんでした。いや、理屈ではわかっているつもりだったんですけどね。

仕事とは「社会貢献」ではなくて、いうなれば「『会社』貢献」だと感じるようになってしまいました
そのうちそういう意識すら薄れてしまい、苦痛に耐えて所属していれば、自動的に生活費が保証されるシステムという感覚になっていたと思います。

皆さんの中には給料をもらっていても、情熱を持って社会貢献している人もたくさんいるとは思いますが、少なくとも僕は、「生活保障システム」という根性でサラリーマンをやっていました。

ベタな言葉遊びですが、「働く」とは→「端(ハタ)を楽(ラク)にする」なんて言いますよね。

小さく商売を始めて、給料日というものがなくなりました。
本当に成果を収めた時に、自分の決めた金額を受け取ることになります。これは想像していた以上に大変なことです。でも、おかげで、誰かの役に立てた瞬間をしっかりかみしめることができるようになったのです。

そんな風にして、10年以上にわたって蓄積したノウハウ、そしてその思いをなにか形にしたいと思って動き始めたのが「念珠の学校オンライン」というプロジェクトでした。

ソフトウェアの時代

では、その「なにか形にしたい」ということは実際に、「なにか」と長らく考えてきました。

うちは念珠屋ですので、念珠を作り、それを販売することが仕事です。
今は、身の丈にあふれるほどのご注文をいただき、日々あくせくしていますが、それが永遠に続くとは思っていません。

ご存じの通り、仏具、法具、広くは伝統産業を見渡すと、その多くは斜陽産業と言われています。この流れは、日本人全体の意識がひっくり返るような歴史的な事件でも起きない限り、今後回復するような状況はないでしょう。

昨今はますます時代の移り変わりが速くて、あらゆる産業が衰退しているなか、ソフトウェアの世界はGAFAを中心に、まだまだ伸びしろがあります。

じゃあ、念珠を売るのはやめて、プログラミングでも勉強したほうが将来のためかというも考えましたが、それでは、またレッドオーシャンに後発隊として飛び込むようなものです。

そこで、自分が誰かに提供できるものはなにかと、ますます考えるようになったのです。

資産の意味合いが変わってきた

「お金」の勉強を少しすると、資産が資産を生むということがよくわかりました。
「お金に働かせる」という表現を使う人も多いです。

日本に限った話ではないですが、現在の資本主義経済ではすでに大きな格差があることは、皆さんが日々の生活で実感しているとおりです。

大げさかもしれませんが、このまま時代が進めば、時々数字を眺めているだけで欲しいものが手に入る人と、時給数百円の仕事を奪い合うような世界にもなりかねません。現在は、ややそれに近い世界になりつつあります。

資産が資産が生むとすれば、僕自身は100%後者に振り分けられます。
そのとき言う「資産」とは、現金の他、不動産、株式など、現金化が容易な資産の事でしょう。今までは、そうだったかもしれません。でも、この先、数十年を考えたときに、その限りでは無いと考えているのです。

僕自身が持っている資産はなにかと考えると、現金化できるものはほとんどありません。

しかし、突然収入を途絶えたところから、なんの元手も無い状態で、幸せな生活を取り返すスキルは学びました。そして、その過程で大きなウェイトを占めるのは念珠を作るための知識と技術です。

その他、日本人であること、北海道に住んでいること、そんなアイデンティティー自体が、資産になりうるかもしれません。

幸せに生きる

「何のために生きるのか」というのは、宗教や哲学の世界ではよく取り上げられるテーマです。万国共通の正解はありません。それぞれの人が自分なりの答えを見いだしていくしかない問いです。

お金はあった方がいいとほとんどの人は思っていますが、お金があっても幸せになれないということも、多くの人が気づいてきました。それなのに悲しきかな、多くの人はお金につながるように行動してしまうものです。

何のために勉強するのか、何のために働くのか、すぐ手前には受験のためとか、成績のため、会社のため、家族のため、社会貢献のため・・などいろいろな理由があると思いますが、その先には「お金のため」であることが多いです。

なぜそうなってしまうかというと、お金が無くなるということを想像するとお不安だからですよね。
ものすごく不幸な自分を想像してしまうからです。現在の価値観で手に入れたものをすべて失うのが怖いからです。

僕は、体験として一度はいろいろ失いました。
その当時付き合う友人のほとんどが生活保護をもらっていましたが、彼らが不幸で、ギリギリ生活保護をもらわなかった自分だけが偉いとも思えませんでした。むしろその逆で、彼らの方がよほど幸せに生きているように見えたのです。

この1年は、世界的に大変な状況で、飲食業や観光業、医療、だけでなく今後はあらゆる業種、目の前の生活にまで負の波が広がることが予想されます。

僕は今、とても幸せに暮らしているという実感があります。
ひょっとして今後、また仕事に困ることもあるかもしれません。「かも」というか、あのときが苦労が軽く思えるほど酷い状況になることだってあるでしょう。

でも、不可抗力であれば受け入れるしかないし、防げるものは全力で防ごうと思っています。
だから、不安とか、恐怖は全く感じていません。

そのように思えた背景には、縁があって念珠屋になれたこと、そして仏教との出会いがありました。

教室の誕生、そしてオンラインへ

「念珠を縁に、多くの人に仏教が広まりますように」

これは、普段仕事をしていて、ずっとテーマに上げていることです。
言い換えると、自分がゲットした幸せに生きる方法を、皆さんにも知って欲しいということです。

そして、どうやったらそれが実現するかと考えたときに、念珠そのものはいずれ売れなくなっていく。
グローバル化は急速に進み、日本式の念珠もいつまで製造されているかわかりません。

職人さんを抱え、大きな工場を持つ会社とちがい、僕が妻と二人でコツコツ作ることができる念珠の数は限られています。幸せをお裾分けできる人数もその限りということです。

そこで、「念珠✕ソフトウェア」という発想で生まれたのが、知識と技術を伝えることです。

おかげさまで、教室は、独自の個人レッスン、グループレッスン、地域のカルチャースクール、全国のお寺から講師として呼んでいただいたりと、幅広く開催してきました。しかし、現在はそういった教室もまともに開けない状況になってしまい、今後も当面は不安定な状況が続くでしょう。

コンピュータやネット環境の進化はめざましく、昔ではテレビ局や大手企業など大きな資本を持っているところじゃないとできないことが、個人でも工夫次第でいくらでも実現できるようになりました。

そんななか、考え抜いて作った仕組みが今回の「念珠の学校オンライン」です。
公開初日から、早速登録していただいた会員様からは、「疑問が一瞬にして解決しました」「本当に感動です!」と嬉しい声が寄せられています。

もうなんかそれだけで、ここまでやって良かったと安堵しているところです。

でも、本当のスタートはここからです。
さらに幸せを感じてもらえるよう、ますますサービスを充実させなければいけません。

本屋さんの平おきコーナーを見ると、世間が今、何に興味を持っているかがわかります。

「お金」のキーワードが多いですね。
みんなお金に興味があるのです。だから、「お金の増やし方」という情報が一番売れます。

念珠のことを勉強しても残念ながらそれ自体はお金になりません。
もちろん、お金にしたいかたは、上手に作って販売するとか、自分が習得したことをまた別な方に料金を取って教えるということでも良いと思います。

直接お金につながらない念珠の事を勉強したいという方は、とても少ないかもしれません。
それでも、一連ずつ念珠をてわたすよりも、大きな可能性を秘めていますし、今、僕が持っている資産である、念珠の作り方と知識を社会に返して行くときがきたということを感じています。

このプロジェクト自体は小さなステップかもしれませんが、次の時代にも変化していくための過程の一歩です。進むべき方向は間違っていないと思っています。

とにかく、自分のノウハウは最終的にすべてここに蓄積しようと思っています。
将来僕が死んでも、日本から念珠が消えても、令和の時代にはこうやって作っていたらしいとあらゆる形を復元できるくらいのレベルで細かい作り方まで情報を載せていきます。

そうして、受講してくれたみなさんが、念珠って面白いということをきっかけに、生活のなかで少しでも仏教と出会っていけるといいですね。もう、毎日が楽しみでしかたありません。