レインボーフラッグモデルの念珠とセクシャルマイノリティへの想い
「レインボーフラッグ」をご存じでしょうか。
レインボーフラッグ(直訳: 虹の旗、英語: rainbow flag, LGBT pride flag, gay pride flag)はレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー (LGBT) の尊厳と LGBTの社会運動を象徴する旗。1970年代から使用された。フラッグに使われた色は LGBTコミュニティの多様性を表し、LGBT の権利パレードの一種ゲイ・パレード(プライド・パレード)でしばしば見られる。
「ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典」レインボーフラッグ (LGBT)より引用
この度、このレインボーフラッグをモチーフに、6色の石をピックアップして、念珠を作りました。

レインボーカラーの念珠を作った経緯
パートナーシップ宣言制度
セクシャルマイノリティである人たちは、かつては、アンダーグラウンドな世界で生きるか、自分のアイデンティティを押し殺して生きていくことが多かったのだと思います。
平成の後半からは、徐々に、いわゆる「オネエタレント」をテレビで見る機会も増えて、同性での挙式という事例もちらほら聞くようになりました。
少しずつ認知はされるようになってきましたが、公的な制度はなにも無かったのです。
2015年(平成27年)4月、東京都渋谷区において、「パートナーシップ宣誓制度」が全国で初めて開始されました。
これによって、「結婚に相当する関係」と認められる証明書が、お役所から発行されることになります。単なる同居人ではなく、正式な家族として認められる様になったのです。
まだまだ、多くの問題を抱えていることは、各方面から聞こえてきますが、それでも、パートナーシップ宣誓制度については、少しずつ全国の自治体に広がっています。
北海道では、札幌市が2018年より同制度を開始しています。
最明寺様にてLGBT結婚式
この流れを汲んで、埼玉県川越市の最明寺様において、同市のパートナーシップ宣誓制度が令和2年からスタートするのに合わせて、同性での仏前結婚式のプランを打ち出しました。
最明寺様のウェブサイト
https://saimyouji-wedding.com/
このとき、記念品として挙式を迎えたお二人に送られる記念品として、レインボーフラッグの色を取り入れた、腕輪念珠を作って欲しいという依頼を受けたのが最初のきっかけです。
お寺の発表以降、式は挙げられないけど、レインボーフラッグの念珠だけ買いたい、というお問合せが相次ぎましたので、定番商品として扱えるものを考えることにしました。
お寺での結婚式では、特別な日に相応しい梵天付きの立派な腕輪念珠ですが、定番商品として取り扱う念珠は、もっと普段でも、使いやすいもので考えました。
現在、略式念珠の頭房タイプ、アミ紐タイプ、そして同じ素材を使ったブレスレットを制作しています。
LGBTとは
LGBTとは、Lesbian、Gay、Bisexual、Transgenderの頭文字を取ったもので、すでに、広く知られつつあるとは思います。
「特定非営利法人 東京レインボープライド」ウェブサイト内の解説ページがわかりやすかったので、参考にリンクしておきます。
LGBTと書いてしまうと、そこにも当てはまらないという声もでてきました。Q(クエスチョニング)、I(インターセックス)、A(アセクシュアル)等です。
そこで、LGBTQまで書くとか、LGBTQIA(+)というように、様々な表記が生まれました。
どれが正しいという議論はあまりないように思います。
そもそも、LGBTを話題にするときには、特定の特性を持った人を囲って区別することが目的ではないからでしょうね。
したがって、本文中でLGBTと表記している点についても、それは、あらゆる性を含めてという意味合いで受け取ってください。
割合で言うと、そういったLGBTよりも、ストレートの方が多いということになっています。一説によるとLGBTは全体の8%ととも言われています。
しかし、それも個人的には、あまり当てにならない数字だと考えています。
はっきりと違和感を自覚して、実生活において生きずらさを感じている人もいれば、ほぼストレートで普通に暮らしているけれども、少しだけ同性にも興味があるということもあり得ると思います。
そう考えていくと、性のありかたというのは、グラデーションで、どこかで線を引けるものではないと思っています。

マイノリティという囲い込み
これは、性の話に限らずですが、マイノリティ(社会的少数者)について言及するときには、どのように捉えても賛否がでることは覚悟しなければいけません。
世の中は多くの場合(とくに民主主義では)多数決で物事が決まっていくことが多いので、マイノリティの価値観が無視される傾向があります。
そこで、マイノリティの人自身が、自分たちについての啓蒙や人権を主張する活動をすることもありますし、マジョリティ(多数派)のほうが何か力になりたいと考えることがあります。
ここで出てくる疑問が、そういった活動は、あえてマイノリティを囲い込むことになっていないかということです。
たとえば、今回のようにセクシャルマイノリティについていえば、自分は性的にストレートなので、LGBTの人たちのために何か出来ないかという、悪く言えば「境界線引き」とマジョリティの傲慢さがあるのではないかということは感じるのです。
先述のとおり、性のありかたはグラデーションだと、認識したつもりでいたのに、逆に境界線を付けることになっていたとなれば本末転倒です。
レインボーフラッグ念珠の目的
そのようなことを踏まえても、なぜ、このレインボーフラッグの色をモチーフにした念珠を売り出そうと考えたかというお話をします。
僕は念珠屋として、「多くの方が、念珠を縁として仏教と出逢って欲しい」ということを、いつも考えています。
そのことが、レインボーフラッグ念珠とどう繋がるのか。
売れない念珠かもしれない
レインボーフラッグ念珠ともなれば、LGBT向けに開発していると思われるかもしれませんが、それが目的ではありません。
現実的に、自分自身がLGBTなのでその念珠を持ちたいという方は、少ないと考えています。
周囲にカミングアウトしていなければ、使うことはできないでしょうし、すでに周囲の理解もあるかたでも、わざわざそのそのことを主張するようなものを身につける理由もあまり想像がつきません。
それでも、プライド・パレードには多くの人が参加し、レインボーフラッグや同色のグッズをたくさん見かけます。
パレードに念珠ということは考えずらいと思いますが、ブレスレットは良いかもしれませんね。

LGBT関連でも色々な方面から活動している人がいますので、場所を選びながら使っていただけると嬉しいです。
派手すぎるけど大丈夫?
こんな派手な念珠をお葬式に持って行っていいの?
疑問を持つ方も多いかもしれません。
それは、この念珠に限らず、昨今の多くの可愛らしいデザインの念珠にも言えることです。
派手か地味かというのは、主観的な問題で、公式ルールがあるわけではありません。
そこで、この件について念珠屋としてお伝えしたいことは、二つあります。
一つは、念珠を使うのは葬儀だけじゃないということです。
毎日朝夕のお勤めをする方もいますし、お墓や納骨堂参りにも使います。多くのお寺では毎月のように様々な法要、法座が開かれていますし、それこそ、仏前結婚式のように御祝の席で念珠を持つこともあります。
その他、寺院観光においても、ただの見物で終わらせず、マイ念珠を持参して、手を合せられる文化がもっとあればいいのにということは、いつも考えています。
あえて葬儀に派手な念珠を持ち込まなくても、楽しく使える機会には、楽しい念珠を使っていただけるといいですね。
お伝えしたいことのもう一つは、ローカルルールを尊重してくださいということです。
どんなに派手でも念珠の形態さえしていれば、葬儀でもまったく問題ないということは少ないです。
仏教的な理由で良い悪いということは、実はほとんどありませんが、葬儀の場合は遺族への配慮は大切なことです。家族や親戚が考えている「常識」の感覚も尊重しなければなりません。
地域に拠っては白以外ダメと言われる場合もありますし、地域やお寺ではそのような習慣がなくても、お姑さんに怒られてしまったということは、よくあることです。
そのような場合には、根拠がなく押しつけるお姑さんが悪いのではなく、地域や家庭に伝わった文化や習慣を大事にして欲しいと思います。
そういった、想像される様々なことを考慮しますと、レインボーフラッグ念珠を積極的に葬儀で使用することはお薦めしません。
いつあるかわからない葬儀のために、一応ひとつ用意しておくという用途には、もっと差し障りがないものの方がよいでしょうね。
念珠もTPOをわきまえるということは大事です。

念珠屋としての意思表示
売れない理由ばかり書きましたが、では何のために販売するのかということです。
改めて、大義名分を書きますと「多くの方が、念珠を縁として仏教と出逢って欲しい」ということを考えます。
男女用に分別された念珠の中から選ばなくてはいけないというのは、ほとんどの人にとってはわかりやすい区別かもしれませんが、そのことに違和感を覚える人もいるでしょう。
もし、そのことで念珠を持つことを諦めてしまったら、せっかく芽生えた仏縁を積んでしまうことにもなりかねません。
うちでは、あらゆるジャンルのデザインを考えており、その都度、「念珠の事なんて考えたことが無かったけど、こんな念珠なら欲しい」というお客様に出会っています。
性的な理由で念珠選びに迷ったときも、ぜひ相談して欲しいと思っています。
このレインボーフラッグ念珠をLGBTの方に押しつけようということではありません。LGBTフレンドリーの店というわかりやすい意思表示ということで、この念珠を他の念珠と一緒に並べたいと思っているのです。
念珠の選び方は、1人ずつにとって条件やルールが変わってきます。
性的な理由で念珠選びに悩んでいる方も、それぞれの立場で最適な選択はかわってくるでしょう。
あなたには、あなたにとってのベストな選び方があると言うことです。
性的な問題を打ち明けてくれればお話を進めやすいですし、言いずらいことでしたら、お話し出来る範囲で、ご自身の「好み」を聞かせてくだされば大丈夫です。些細なことでも、遠慮無く相談してください。
過去の関連記事も貼っておきますので、ご興味あれば、こちもお読みください。
とにかく、この念珠が欲しい!
実は、川越市の最明寺様にてLGBT結婚式の話が持ち上がって以来、このデザインの念珠が欲しいというお問合せが、うちにも、お寺にも相次いでいます。
それぞれ、どんな事情で、どんな立場で欲しいのかお聞きしているわけではないので、わかりませんが、詳細が決まらないうちから、とにかく欲しいと声を掛けてくださる方がいます。
まずは、そのように反応してくださった方を皮切りに、少しずつ輪が広がっていけば良いなと思います。
そして、性別に関係なく、念珠って面白いな、仏教っていいなって、思えるきっかけになれるといいですね。
レインボーフラッグ念珠の基本スペック
最後に、念珠のそのものの仕上がりについて書いておきます。
使用素材は、以下の通りです。
赤:レッドメノウ
オレンジ:レッドカーネリアン
黄色:イエローメノウ
緑:グリーンメノウ
青:ブルークォーツァイト
紫:アメシスト
透明:本水晶
房:正絹頭房/正絹アミ紐房
全ての色、サイズや品質を考慮した材料の確保をすることは大変難しく、一部の天然石については、仕入状況によっては、予告なく変更する場合がありますので、ご了承ください。
仕立方は、一般的な念珠とまったくおなじ本格的な方法です。
素材によっては、個別に穴を調整して使っています。
テグス等の簡易的に仕立てられたものと違って、使い心地も良く、将来的には修理しながら末永くお使い頂けます。

“レインボーフラッグモデルの念珠とセクシャルマイノリティへの想い” に対して1件のコメントがあります。
コメントは受け付けていません。