念珠オンデマンド「最近」念珠屋が考えていること その2

念珠屋は商売になるのか

「よく食って行けますね」

と皮肉を込めて言われることがあります。

結論からいうと、念珠屋だからということではなくて、好きなことをやりながら、小さく食っていく程度ならなんでも商売は成り立つと思います。

文明の利器は非常に強力で、一昔前なら大手企業や専門家にしかできなかった特殊な技術が必要なこと、沢山の経費が必要だったことが、何でも個人用のパソコンでできてしまいます。

インターネットの力は偉大で、膨大な時間と交通費をかけて名刺を配って歩かなくても、莫大な広告費をかけて、テレビCMや新聞の折り込みチラシをいれなくても、このブログも含めて、ウェブサイトやSNSを通じて、多くの人と繋がることができます。

足で営業して、接待と莫大な広告費をかけ、DIYの発想がない世代の方は首をかしげます。

コンテンツマーケティング

近年、ネットを使ってビジネス展開している人なら、当然踏まえている事だと思いますが、コンテンツマーケティングということがしきりに言われています。

ピンとこない人のために簡単に説明しますと、昔のように商品の宣伝、広告を流布するのではなく、ネット上にお客さんが欲しがっている価値ある情報を積み上げていくことで、将来の見込み客を育成するという手法です。

それが流行って何が起きているか。

念珠を扱っている業者は、こぞって念珠に関する知識を何かの本に習って、一生懸命書きまくっているわけです。業界全体で、盛り上がるというのはとても良い傾向だと思うのですが、一方で批判したい部分もあります。

あまり書くと、他社の悪口になりますのでほどほどにしますが、それらの積み上げているコンテンツというのは、内容を理解していると思えない状態のまま、本の丸写しだったり、とても限定的な内容をあたかもそれが全国共通の正式な回答であるかのように書かれていることが多いです。

たとえば宗派による念珠の形の違いというのは、まったく実情と合っていないことが多いです。マナー講師による念珠の扱い方に至っては、目も当てられないこともあります。

これはたぶん念珠だけじゃなくて、情報がカオスになっているこれこそが「ザ・インターネット」の世界なんでしょうけど。

僕が発信したいことは、不確かなことを物知りぶって書きたいわけではなく、念珠のことを追求していくうちに、わかったこと、気づいたことの感動や面白さを共有したいということにあるのです。

ですから、具体的に念珠の事を書くときには「~だったかもしれません」とか、「~と言われることもあります」という逃げた表現が多くなると思いますが、地域、時代、宗派などの歴史や文化を無視して断定出来ることというのは、実はほとんど無いのです。

チャレンジ、チャレンジ、チャレンジ

たまたま浮かんだアイディアひとつで大成功した企業というのは、聞いたことがありません。成功者はみな、信じられないくらいの失敗を重ねた中で、やっとひとつのアタリが出ています。

先代の商売を継いだ方でしたら、完成した利益システムがあると思いますので、そちらに大部分の時間が取られてしまうでしょう。僕の場合は初代ですので、厳しさもありますが、そういうしがらみがありません。

そろそろ、「なかなかものにならんヤツ」というイメージになりつつあるのかもしれませんが、日々、新しい試みへ挑戦する姿勢は変えずに続けようと思っています。

最新のチャレンジは?

念珠オンデマンド

ほら、いよいよ意味がわかりませんね?笑

オンデマンドという言葉自体は、聞いたことがあるかもしれません。テレビやラジオでも、みたい番組を見たいときに見られるシステムをオンデマンド放送なんて呼ばれています。印刷業界でも、オフセットによる大量印刷ではなく、その時に必要な分だけ少部数印刷することをオンデマンド印刷といいます。

念珠も、極小ロットで面白いものが作れないか?という発想が、「念珠オンデマンド」です。

製造業には厳しい多種少量の念珠

念珠というは、すべて手工芸品の様に思っている方が多いと思うのですが、意外にも大量生産品という側面もあります。たしかに手作業の部分は多いとはいえ、大量の流れ作業ということも少なからずあります。

「略式」や「八宗用」と呼ばれている形は、宗教的な理由で進化したものではなく、なるべく同じ形にしてくれた方が、制作、販売のコストダウンができるという業者側の意図しか感じられません。

ただ、そのおかげで一般の人でも簡単に念珠を手にすることができるようになったと考えれば、一概に批判もできないのですけど。

うちのように少人数態勢で1連ずつ手作りをしていても、価格は大人数の大手企業や機械編みで大量生産できるものに引っ張られてしまいます。

仕立作業もそうですが、玉の制作に至っては、5連や10連分の玉を依頼することはコスト的にできないのです。今までは手に入る材料の組み合わせで差別化をはかろうとしましたが、せっかくのアイディアも老舗、大手が同じ事をしたら、それはとても敵いません。

今までに発売した北海道産の木を使ったシリーズも、ある程度数をさばける形にしぼって作りましたが、その1でも書いたように、やはり念珠は「百人百色」。2人目には違う形が欲しいと言われてしまうのです。

たった1連でも・・・

そこで、ここ数年ずっと構想を練ってきたのが、たった1連でも木材から玉をリーズナブルに切り出せないかということです。

今年は、要望通りの機械を作ってくれる企業がみつかり、資金的にもありがたいご縁があり、さらには、自作の工作機械をいくつか組み合わせて、実現率はすでに95%くらいにはなっています。残りの5%は、最終調整というところまで来ました。

これで、本当にオリジナルの念珠を1連分だけ、玉から切り出して作る事が可能になります。しかも従来の念珠の相場の範囲内の価格で作ると言うことも可能になるわけです。まさに、「念珠オンデマンド」です。

北海道の樺の木を使った念珠