畳の枠を製作しました

お客様からのリクエストで、畳の枠を製作しました。
木地は僕の手作りですが、当初はここまで立派に仕上げる予定でもなく、材料も少々甘く見ていたのですが、塗装の職人さんが頑張ってくれました。なんども下地を重ねることで予定よりも納期は延びてお待たせしてしまいましたが、ピカピカに仕上がった驚きの黒い艶で、大変満足していただきました。

実はこれ、代用漆で今後とても可能性を感じている塗料です。

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今日は、新しい代用漆について少し触れたいと思います。

仏具と漆は切っても切れない縁があります。
塗料としての漆のメリットは多岐にわたり、ここでは細かく説明しませんが、何よりも500年、千年前の漆塗りの木仏像が今なお現存するだけでも、漆の力が想像できます。
しかし、本物の漆というのは体質によりかぶれたり、技術的にも扱いが難しく、ここ数十年は「カシュー漆」という、代用漆がたくさん使われてきました。
現在でも、多くの仏壇や仏具で、カシュー漆はよく使われています。良質な漆も漆塗り職人も減少していくなか、低コストで仕上がりの良いカシュー漆はむしろ高需要にも感じています。

長い間、仏具業界では本漆かカシュー漆かといいう2択をしてきました。ところが、ここにきて強力なライバルが現れました。「夢」という塗料です。
これも、カシュー漆同様、人工的な代用漆です。「夢」の特徴は、専門的に言えばエポキシ系の2液塗料で、主剤に対して、硬化剤を混ぜてから塗ります。なので、カシューよりもはるかに短い時間で硬化し、その仕上がり強度もカシューをしのぐものになっています。硬化が早いということは、職人さんの手間も減り、工期も短く、乾燥用の室を占有する時間も短くなりますので、結果的に低コストで仕上げることができます。

名前の通りまさに「夢」のような塗料ではありますが、まだまだ取扱いのできる職人さんが少ないというのが欠点です。
また、どんなに仕上がりが良くても、所詮は偽物の漆という見方もあります。
お客さん目線では、結局どれが一番いいの?と聞きたいのが本音でしょうし、僕も自分なりの見解を示させていただくとすれば、コストを無視すれば、やはり本物の漆を使わない理由はないように思います。使う場所や予算の都合で、本物志向より見た目重視という場合は代用漆でも、満足度以外の部分では大きな障害になることもありません。そして、「カシュー」VS「夢」では、塗料としては「夢」に軍配を上げたいところです。細かいことを言えば、同じ条件なら肉持ちはカシューの方がよかったり、夢は粘土が低いので立面に弱い傾向もありますが、硬化が早い等の利便性から、欠点をカバーする方法はいくらでもあります。

仏具は新たに作るのも修復するのも大変費用がかかります。
もちろんすべてが本物にこだわれたら素晴らしいですが、これからは限られた予算で、仏壇、仏具を後世にも残していかなければいけない時代です。新しい素材や技術も取り入れながら、上手に使い分けたいものですね。