北海道で作る数珠
ネット時代、とても便利なもので、隣町からも本州からも同じような感覚で念珠のご相談、ご注文を承っております。
北海道の念珠屋です!
ドングリの木、ミズナラ。ナラは本州でも取れますが、北海道産のものは品質が高く、海外へ輸出していたという歴史もあります。
今更ですけど、そうなんです。
例えば真言宗の方でしたら、高野山に集まる念珠屋さんにお願いすることが多いでしょうか。
また、日蓮宗の方でしたら、まずは見延のお店をさがすかと思います。
では、北海道の念珠屋さんでは誰がかってくれると思いますか。
直接のお付き合いで対面販売ということがありますので、もちろん札幌近郊が圧倒的に多いのではありますが、ネット限定で売上分布を見ると、北海道内と、本州以南のお付き合いがほぼ半々ということになります。
それぞれに何か理由があり、わざわざ遠くからでも、ご注文や修理のご依頼などをいただいております。
北海道でしか買えない念珠
嬉しいなといつも感じているのは、無理に「北海道」というブランドを押し出さなくても、遠くから問い合わせをいただくことが多いことです。
海産物とか乳製品なんかだと北海道からお取り寄せなんていうのは、とてもアドバンテージになりますが、念珠に関して言えば、北海道で作るメリットはありません。それでも、選んでくださることは、とても誇りに思っています。
そこで、開業来ずっと考えていることがあります。
北海道でしか買えない念珠を作りたい
そのように、ことあるごとにアナウンスしています。
今までに、シラカバ、ミズナラ、イチイ、アスナロ、エゾヤマザクラにチャレンジしてきました。
北海道産の木材ではある程度、道筋が見えてきました。
結果的に北海道産のものでなくても、その心意気を買ってくださり、お客様となることも多いです。
実は失敗の方が多い

エゾヤマザクラ。木肌が綿密で美しい。
木材限定でも、それぞれの特製があって一長一短。
趣味なら、好きな木を見つけたままに楽しんで作れば良いのですが、ビジネスとしてそれでは成立しません。
コスト計算しながら、売り上げ目標を立て、採算を取ろうとすると、ある程度まとまった量を玉にする必要があります。
いくら北海道産とはいえ、何の変哲も無い木の念珠が1連10万円というわけにもいかないですし、大量に作ったのに全く売れないとなっても困ります。
木材以外では、エゾシカの角、トナカイの角、十勝石他、道内で取れる鉱物、道南で取れる海松、色々チャレンジはしていますが、いずれも上手くいってません。
小さなアート
念珠は小さなアートです。
実用に耐えうる耐久性、教義的に問題の無い配列。その中で伝統をしっかり踏襲しつつも、一歩踏み出したデザインにする勇気。
たくさんの要素が相まって、新しい念珠のデザインが生まれます。
完全なるプロダクトアウト
ビジネスに詳しい人だと、気になっていると思います。
お客さんがどんなものを欲しがっているか、調査した上で売るものを調整していくマーケットインとは真逆の発想で、こんなサービスを世間に広めたいということをプロダクトアウトと言いますが、売り手の独りよがりで成功しないことが多く、ビジネスの世界ではあまり良い意味で使われない言葉です。
そういう目線で行くと、うちは完全にプロダクトアウトの発想です。
たとえ世間では「形だけあれば、安くて使い捨てでもかまわない」というリサーチ結果が出ようとも、「皆さんが持つべき念珠はこうあるべきだ」という理想を掲げて念珠を作っています。
少なからず指示をしてくださる方がいるのも事実。逆に、見向きもされないのも事実。100円ショップで買える時代ですからね。
執着をあえて勧めるというジレンマ
初めて挑戦した道産材料、シラカバ。実はこれほど綺麗なシラカバは、初期ロット以外取れていません。
もう一工夫して、いつか復刻版を出したいという気持ちはあります。
仏教用語としては執着を「しゅうじゃく」と読みますが、良い念珠にこだわって欲しいという想いは、仏教の観点からすると推奨されません。しかし、念珠そのものが方便だとすれば、良い念珠を求めようとする姿勢が、同じように仏教への興味へと向けられるといいなと思っています。そして、しっかりと仏教と向き合えたら、念珠も自然と手放していく(こだわらなくなる)のかなとも思っているのです。