本物の琥珀(こはく)とは。

※(当ブログでは、念珠=数珠として書いています。文脈上の理由などから混在することがありますが、ご了承ください)

●溶かして成形した琥珀(こはく)は本物か?

前回の投稿で、虫入り琥珀について書きました。
天然の物もあれば、溶かして現代の虫を入れた偽物ももあるという話です。

虫の話は置いておいて、一度溶かした琥珀は本物と呼んでいいのか。

この辺が難しいところで、業界用語では「圧縮琥珀(あっしゅくこはく)」や「アンブロイド」と呼ばれています。素材自体は正真正銘の琥珀ではありますが、人工的に手を加えられていることと、色調整のための染料が混ざっています。

念珠の世界ではこれらを偽物とはあつかわず、単に「琥珀」と表記してあることがほとんどです。

天然が良くて圧縮が悪いと言うこともありません。「琥珀の間」が有名なロシアのエカテリーナ宮殿は、この圧縮琥珀の技術で作られているそうです。

実は、圧縮琥珀を作る技術自体とても難しいのです。ここ10年ほどの間で、人件費の関係で驚くほどの価格高騰をしています。それでも、天然の方がまだまだ高いものです。


圧縮琥珀の特性を上手く利用したデザイン琥珀。
圧縮時に、色違いの琥珀を層にして組み合わせています。

●圧縮、コパール、天然、プラスチックの見分け方

これははっきり言って、かなり難しいです。

琥珀の専門書にはエーテルという薬品をつけて擦る、熱した針で溶かす等とよく書かれています。コハク酸が含まれているかどうか等、化学的に検証する方法です。

しかし、念珠屋の立場で言わせてもらえば、すでに製品化されている物に一か八かで傷をつけてみるような鑑定方法はとれません。


お若い一般女性からのご注文だった、グリーンアンバーの振分念珠
長らく迷ったあげく、やはり房は白。

●せめてプラスチックだけは勘弁してもらいたい

・・と思いませんか。
それなら、比較的簡単に調べる方法があります。

飽和食塩水(ほうわしょくえんすい:常温でこれ以上塩が溶けなくなるまで溶かした水)を用意します。
その中に、琥珀を入れるのです。

比重の関係から、琥珀(天然、圧縮)は浮きます。
プラスチックは沈みます。
コパールは食塩水とほぼ同じくらいの比重のため、温度によっては微妙に浮いたり沈んだりするかもしれません。ただ、アクセサリーの世界と違って、念珠用としてはコパール出回っていないように思います。

つまり、「塩水に浮けば本物」これだけ覚えておけばOKです。
琥珀の念珠をお持ちの方は、そろそろ房を交換しようというときにでもお試しください。
沈んだりして・・(^^;

実験の後は、真水でよく洗い流し、やさしく拭いて乾かしてください。

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プラスチックの念珠を持ってきて、「これ、なんぼくらいすると思う?」という方が結構いますが、たちの悪いイタズラはやめましょう。苦笑
「あーやっぱり、わかる?」って、僕が見ているのは「琥珀らしき念珠」ではなくて、その方の顔です。

実は今、ブルーアンバーという、とんでもない琥珀の入手ルートがあるのですが、それはまた別の機会に。


知る人ぞ知る、ブルーアンバー。
紫外線に当たると、青く反射します。