念珠修理って、とても難しい理由
十連十色の念珠修理
修理品の預かり
「これ、直してくれる?」と、気軽に修理を依頼してくださるのは嬉しいのですが、受け取るこちらは意外と慎重です。
と言いますのも、やってみないと、どこまでどういった対応ができるのか、それでお客様が満足していただけるのか分かりません。
「ご覧の通りあまり状態が良くないことと、正直申し上げて、もともとの作りもアレなもので・・」ということをお伝えしなければいけないことも多いです。
それでも直したい
作りが悪く、直しても良いものにならないということは理解していただいても、「それでも昔親が買ってくれた物だしね」ということで、修理させていただく機会は多いです。
どのように直すか、経験と技術、そして愛情
当店で厳選した良い材料で新品を作る場合と違い、「こんな玉じゃ、まともに使えない・・」と思いながらも、最善の策を考えます。
なるべく切れない、なるべく緩まない、よく切れることを想定するなら、今後の費用を抑える等。
お陰様で失敗もしながら、たくさんの経験を積ませていただき、どんな念珠でもなんとかなるという自信はつきました。
納品後にトラブル発生
出来上がって品物をお返ししたお客様から、大変ご立腹の様子でお電話を頂いたこともあります。
「こんなに表面が剥がれているんですけど、どーなってるんですか!磨いて失敗したんですか?!」
もちろん、そのようなことはするはずありませんし、仮に、特別な理由でなにかの処理に失敗してしまったなら、謝罪と代替え品を考えるのは当然のことです。だまって、返すことなどあり得ません。
はじめから修復不可能なほど剥げていた上に、交換可能な部品についてはわざわざ取り寄せてまでサービスで交換したのですが・・
といっても、証拠写真があるわけでもなく、順を追って説明するしかありませんでした。
念珠の価値
トラブルの原因
なぜ、こういったトラブルが起きるか考えますと、念珠の評価、価値というのは、物質的な状態だけで判断できないことが多いのです。
一つは、何か特別な謂れのある場合。たとえば今は亡き大切な人にもらったもの、特別な記念にあわせて購入したもの等です。他店で相談すると「直す価値なし」と一蹴されて、嫌な思いをしたあとに、当店に相談にこられる方はとても多いです。
もう一つは、上記の例のように、昔のピカピカの状態をイメージしたまましまい込んで、あれから何十年・・・繋いでみたらこんなはずじゃ無かった、ということもあります。
直さずに買った方がいい?
これも、よくある質問です。
あとでトラブルにならないためにも、修理費用の概算と、買った方が安いという場合にはその旨をお話しします。
しかし、それぞれに想い入れがあるだけでなく、単純に購入価格でも比較できないことが多いです。
「買ったらいくらぐらいするの?」
「うちの値段だと3~4千円ですね。」
「えー!!昔1万もだして買ったんだけど!」
これ、ほんとアルアルです。
ネットがない時代はそれぞれ言い値みたいなもんですから、高くすれば高級品になります。
今は、ネットでそれをやってる業者もたまにいますので、なんともいえませんが・・
いずれにしても、客観的な評価に加えて、持ち主の想い入れ、事情を考慮して、修理をするべきか、諦めるべきかは判断すべきです。
愛情を持って
こうなってくると、念珠屋さんの責任や求められるスキルは非常に重いのですが、対象が念珠修理である以上、心のケアまで修理代に転嫁することはできません。
責任ある念珠を販売している業者であれば、自社製品の修理は喜んで受けてくれるはずです。
他社製品は受け付けないお店も多いです。これもある意味では賢明な判断で、商売の基本を考えると当然のことです。非常に高いレベルの職人を育成する必要がありますし、コストに見合う売上高は見込めません。実は粗悪念珠の普及率ったらすごいシェアです。それに、新品を買ってもらった方が儲かるのです。
たまに、「おたくで買ったんですが!」と、ゴリ押ししてくる方がいますが、全て、僕が触った念珠ですから、見たら分かりますよ。うちのかどうか。
よそのだとしても、なんとか直しますので、どうぞ穏やかに。
お金で解決できないことを何でカバーするかといえば、愛情をもって対応するしかありません。
壊れた念珠を持って、どうにかしたいと思っている人なんです。悪い人であるはずがありません。
それどころか、きっと周囲の良き縁となる方ですので、お香の香りがする菩薩様だと思うのです。
そう思うと、儲からない念珠修理も、親身な対応も、ご供養にほかなりません。
最低限の生活費を得る方法は他に考えることにして、念珠修理を喜んでやらせていただくのも悪くないなと思っております。