おじいちゃんの想いを掌に

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真言宗の念珠の修理を承りました。
依頼主は女性僧侶の方で、ご自分で買われた比較的新しいうちに糸が解れたものと、ボロボロになるまで使い込んだお祖父様が生前使っていたものを合わせて、ひとつの念珠にしたいというご希望でした。
透明な水晶の部分は新しい玉、茶色い玉がかなり使い込まれた形見の星月菩提樹の玉です。
108個の玉を半分の54個ずつこのような配列にするのは「半装束」と言われ、他の宗派でも見られる形です。僧侶用で袈裟をかけて使う念珠です。

真言宗では修法の内容によって、念珠の材料まで使い分けがあるそうで、厄除けや護摩の際の「息災法(そくさいほう)」には菩提樹を用います。息災法とは災害や病気、厄難、煩悩を鎮静する修法です。
北海道のお寺の大多数は座禅や念仏の宗派ですが、それぞれにまた全然違う習慣があるのですね。中糸が赤というのも重要なんだそうで、初めてこの色の絹糸を通しました。大変勉強になりました。

理想通りの仕上がり、ただただ感謝の気持ちで、というお礼の言葉と合わせて
「亡き祖父が側にいてくれるような気持ち…
身を引き締めて、今を一所懸命過ごしていきたいと改めて感じました。
という嬉しいメッセージを頂きました。

一般の方でも、亡くなった先達が唯一残した念珠というのはよくあることです。
時代もあると想いますが、多くのは場合はそれほど高級なものではなく、正直なところ物品の価値としては直すより新しいものを買った方が得策ということが多いのです。しかし、そこには単なる物品の価値を超えた「想い」があり、文字通り、「念が入った珠」のプライスレスな価値を相続する仏縁となっていくのです。