『宮崎哲弥 仏教教理問答』サンガ

2011年の暮れに出たこの本のサブタイトルは「今、語るべき仏教」というのに、すでに4年半が経ってしまいました。
サンガらしいディープな内容で、5人の僧侶と、連続対話形式になっています。

白川密成氏、釈徹宗氏、勝本華蓮氏、南直哉氏、林田康順氏の5人です。
それぞれ、各宗派で注目されている僧侶なのはいうまでもありません。

2Q==

 

一人ずつの対談の感想を述べるにはネタバレになるということもありますが、僕の浅はかな仏教知識と文章力では、本の魅力が伝わらないばかりか、論理的なミスも書いてしまいそうなので具体的な部分に触れるのは差し控えます。

いずれにしても、「宗派とかよくわかんないですぅ」というレベルで読む本ではありませんが、日本仏教の各宗派を見渡せば、それぞれに矛盾を感じる話があったり、宗派相互の言い分の違いというのもどのような理論で発生するのか気になるものです。対話の内容はどちらかといえば専門用語バリバリで、仏教書を見慣れていない人にとっては読みやすいとは言えませんが、宮崎氏がそれぞれの僧侶にぶつけていく疑問は、いわゆる俗の人が疑問に感じることを素直に代弁してくれているように感じます。
特に宮崎氏は浄土教に対する「違和感」が強く、浄土真宗の釈撤宗氏、浄土宗の林田康順氏にはグイグイ刺さります。

浄土宗と浄土真宗の違いというのも、あまりズバズバと語る人は少ないように思います。記憶に新しいところでは今年の学校教科書を巡って、浄土宗と浄土真宗の宗派の解釈について、浄土宗側から物言いがつきました。浄土真宗側は、さほど重い問題と見なかったような見解が出されましたが、林田康順氏のお話を読むと、平等であるべき教科書の短い説明は、あまりに雑すぎるというか、説明不足というより問題があるということは、改めて認識します。

それぞれの対談相手の宗派を軸に話が進んでいきます。これは宮崎氏の論法によるものだと思いますが、仏教書にありがちなふわっと擦り合わせて話を平和にまとめようとすることなく、徹底的に論理追求するところに対談の魅力を感じます。それによって、読者としても解決する部分は反論の余地なく、疑問は疑問として明確に残り、また次のステップへの知識欲を掻き立てます。

また、白川密成氏との対談で話題のメインとなる小説『太陽を曳く馬』は、他の4人との対談でも時々引き合いに出され、やはり読んでみなければと思っています。正直、内容が濃すぎて一回読んでも、興奮だけが残り、魅力的な論理展開は置き忘れてきたような感覚になります。少し時間を置いて自分の知識を深め、いずれまた読み直したいなと思わせるような本でした。