念珠のデザインあれこれ

念珠の形の話になると、大きく2パターンの方がいらっしゃいます。

一方は、何かと「正式」にこだわりがあり、房の色や形にも自分なりにルールがある方。
もう一方は、「え?宗派とか関係あるの?」という、全然気にしない方。

僕が今まで調べたことをまとめると、念珠の玉配列に宗派として正式なこだわりがあるのは日蓮宗系の各宗派で、それ以外では意外とはっきりしとした決まりはありません。日蓮宗でも梵天の仕立て方や色大きさもさまざまですが、そこまで細かいルールがあるわけでもないようです。ただし、習慣的に好まれる、嫌われるといったことや、地域柄、世代、いろんな要素がありますので、絶対的な正解、正式はありません。
たとえ所属する宗派の本山が良いといっても、お姑さんがダメといえばダメという世界があることも事実です。

玉配列は各宗派ごとに利便性や教義上の理由で進化、または簡略化したという見方はできると思います。
しかし、「房」についていえば、どんな文献を漁っても、各宗派の作法をつかさどる機関に問い合わせても、今のところ、流行と装飾性で変化してきたとしか考えられません。
「流行っている」という表現を使うと、違和感を感じたり、場合によっては怒ってしまうお客さんもいますが、実際のところそうとしか言いようがないのです。

例えば、真言宗、浄土宗、日蓮宗でよく使われる菊房という作り方は、ほとんど釈迦梵天(小田巻梵天、かがり梵天)が主流になっています。また、浄土真宗系各派の男性僧侶の間では、こういう路線が流行りつつあります。
男性でも小ぶりの玉。2~3色使った長めの紐房、角アミの部分は一世代前から定着したものですが、最近はさらにその下に釈迦結び等の飾り結びをするのが、ひそかにブームになりつつあります。

そんなことを踏まえて、間もなく納品になる記念品はこんなデザインでご提案させていただきました。

紫水晶紐

紫水晶はグレードによって価格の幅が広く、ドッグティースアメシストや藤雲石などのように貴石の世界では分類されているものもあります。このたびは、最高グレードの紫水晶に、明るい紐を組み合わせました。
細かいですが、角アミは2色で飾り結びのところだけアイボリーの紐を足してあるのがミソです。

いちいち意匠登録を取ったりする業者もありますが、「流行」ということを意識するとその意味は薄れます。「ちょっと前にあったよね、そういうの」というデザインをわざわざ真似して売る必要はありません。僕の考えとしては、おしゃれなものを日夜考えますので、皆さんどんどん真似して流行らせてほしいと思っています。アパレル業界で言うところのファッションリーダーである方が、よほど価値があります。

仏教を本気で信仰すれば、こんなところで色気をだすこと自体違うと思うし、わざわざ執着を一つ増やすのもどうかという疑問はありますが、それを言ってしまったら仏教には関係ない「先祖供養」だって同じことで、「念珠から入る」という機縁もあってもいいと思うのです。せっかくなら、お好みの念珠を、お気に入りの形に仕立てて、皆さんにも楽しんでいただきたいと思います。