お客様と共に作る、もっと自由で楽しい数珠

※(当ブログでは、念珠=数珠として書いています。文脈上の理由などから混在することがありますが、ご了承ください)

オリジナルの念珠を作りたい

というご要望は意外にも多く、あれこれ玉や房を選んで自分だけの念珠にしたいというお問い合わせは頻繁にいただきます。

これ、すごくいい雰囲気だと念珠屋としては感じているんですよ。

なぜ、今までの念珠はダサかったか

以下、どこかの教科書に書いていたわけではないのですが、僕の個人的な考察です。

はっきり言ってしまえば、売り手の怠慢だと思うんです。なるべくお客さんに知識を持たせないで、安い材料で同じものを大量生産して高額で売る。その方が楽に儲かるんです。

その点、車なんかはは社内でもデザイン、安全性、走行性能、最近では環境性能なんかも十分審議検討されて、マーケットに流れればその反応から、また、よりよいものが出来ています。

昭和の時代、数珠の世界ではその流れが無かったのです。
買い手の方も、こんなものだと押しつけられると、こんなものかと思って買っていました。

実は、変わりつつある念珠業界

「長岡さんのところだけ特別!」みたいに言っていただけることが多いのですが、意外にも最近は老舗もオシャレな念珠を開発しています。

車や家のデザインもそうですが、念珠業界でもなんとなくトレンドがあり、アシンメントリーな配列や男性でもやや小ぶりの玉を使う傾向がありますし、従来は価値があるとされた共仕立(すべて同じ素材)よりも、個性的に素材をミックスしたものも多くあります。

うちが特別なのは、ハイセンスなデザインを売れることではなく、一人ずつお話しを伺ってから商品を提案したり、時には新たにデザインを起こせる事です。

若い世代に伝わる念珠を

先日いらした素敵な姉妹のお客様と一緒に作った念珠はこんなデザインになりました。
小さな赤ちゃんを抱っこしてこられた、若い世代の方です。


お客様のセンスを組み合わせて、今までうちでも作ったことがない新しいデザインが誕生しました。
(左)数種類のカラフルな唐木に本瑪瑙(めのう)仕立、(右)欅(けやき)と玻璃インカローズを交互にセット。
どちらも、素材の色なじみがよく、個性的なのにしっくりくる可愛らしい念珠になりました。

中村勘三郎の有名な言葉で、型がある人間が型を破ると「型破り」、 型がない人間が型を破ったら「形無し」というのがあります。

そこ行くと、頭が固い僕らよりも、固定概念のないお客様のほうが案外簡単に型を破ってくれることがあるのですが、脈絡なく自由に作るだけでは「形無し」の念珠になってしまいます。
それを、経験や知識をもって「形無しなアイディア」→「型破りな念珠」に仕上げていくのが、自分たちの仕事だと感じています。

「あー、これカワイイ!」から始まる念珠

念珠を楽しむのは不謹慎と思っている方もかもしれませんが、それを言ってしまったら、立派な仏壇やお寺の伽藍(がらん)は要りませんし、お坊さんの袈裟(けさ)だって本来はボロ切れでも良いはずです。みんな人間の都合で有り難く思ってもらえるように立派になったものです。

でも、そうじゃないと、大事に出来ないという人間は弱い性質なものですから、そのように進化してきました。
お気に入りの念珠を持つことは決して悪いことではないと思っています。

いくら買ってももっと高価な念珠が欲しい、他人の念珠より劣っているのが悔しいとなっては仏教的にも本末転倒ですが、「この念珠は素敵だな」というところを機縁に、仏教に親しんでいただければ何よりです。

市販の念珠もオシャレになりつつあるとは言っても、致命的な欠点があります。
それは、お使いになる方のためだけにデザインされたものではないということです。

本当に欲しいのはカワイイ念珠ではなく、仏教に少し前向きになれたという気持ちだったり、念珠にまつわる自分や作り手の想いの方かもしれませんね。