新しい取り組みや活動(前略御住職様 第24号 その3)

新しい取り組みや活動

飲食については、段階的に回復

御斎だけではないですが、とにかく飲食を伴う行事にはやや慎重な姿勢が続いています。お寺以外を見渡しても、二〇二三年が移り変わりの年だったように思います。

第一段階として、そろそろ一緒に食べる時間があっても良いじゃないかという雰囲気にはなりました。しかし、以前の様に婦人会のお母さんたちや地区ごとの当番などで、みんなで食事を作るというのは、まだやめておこうとするところが多いようです。単にコロナの感染を恐れるというよりは、世間の衛生に対する意識が高まったので、ノロウイルス蔓延の心配も考慮されることが多くなりました。各地域の保健所でもコロナよりもノロウイルスによる食中毒に関する注意を多くみます。

その状況を穴埋めするように流行っているのがキッチンカーです。単なる出張販売とは違い、調理施設を持ったワゴン車などで、その場で調理してくれます。実際に北海道内のお寺でも境内の駐車場に呼んで販売してもらうという事例を多く聞いています。昼食時にかかるのでしたらラーメン、焼きそば、ホットドッグなどの食事になるものが良いでしょう。午後のお勤めが終わる昼下がりに合わせるのでしたら、たこ焼きやクレープなど小腹を満たす軽食、除夜会など寒い季節にはホットドリンクもいいですね。

感染対策だけでなく、在庫リスクや食中毒の不安など、あらゆる心配を外注できてしまうため、学校や地域の自治会のお祭りなどでも、積極的に取り入れているところが増えてきました。最近は種類も豊富ですので、参加者の好みや地域性に合わせて、呼ぶこともできそうです。ただ、値段はやや高めという印象があります。近頃の物価上昇もあり、なおさらです。

費用については契約の方法によりますが、販売総数がはっきり見込める場合は買い取り方式、最低売上額を決めて達しない場合は主催者が負担する方法、ある程度の売上が見込める場合は、売れた分に一割程度の手数料を設定する場合や、キッチンカーの売上だけで十分な利益の確保が見込める場合は手数料等が発生しない場合もあります。お参りの人数や法要の状況等を相談して交渉してみるとよいでしょう。近隣で、すでに呼んだ経験のあるお寺の知り合いがいれば、横のつながりで紹介してもらうと、より交渉がスムーズですね。

ひょっとしたら、関係者や地域のつながりの中で、キッチンカーを運営している人が意外と身近にいるかもしれません。お寺の関係者以外でも、キッチンカーを目的に境内に遊びに来ませんかという呼びかけもできます。こういった取り組みをきっかけにお寺以外の地域の方と繋がっていくのも良いかもしれませんね。

手間の軽減だけでなく、衛生管理のリスクも回避できる。 キッチンカー自体が目玉イベントにもなり、地域のつながり作りにも。

お寺のインターネット活用は

オンライン上での活動も一気に広がりました。SNSもここ数年は一気に進化して、YouTube以外でも動画機能が強化されました。ほとんどのSNSでライブ配信も可能であるため、一昔前ならテレビ局じゃないとできないような生中継が、簡単な設備でできるようになりました。しかもそれは、地上波と違って全世界対応ですし、費用もかかりません。凝り始めると機材は揃えたくなりますが、スマホひとつでも可能なことです。

オンライン葬儀

成功事例としては、ここ数年で一躍有名になった僧侶の方は多数います。(有名になることがかならずしも成功とは限らず、苦労も多いようですが……)ネット上でのつながりが多いということは、現代では影響力に直結しますので、純粋に仏教の教えを次世代に伝えたいと考えたときに、これはとても大きな意味を持ちます。おそらく、鎌倉時代の宗祖も当時はとても有名で影響力があったのではないでしょうか。

影響力を持つためのポイントは、まずは、配信数を増やすことです。真面目に法語などのみをつぶやき続けているアカウントもありますが、人気は集まりません。日常生活のあらゆることを楽しみに変換し、時折、その心持ちを仏教の話しと織り交ぜて語るような僧侶アカウントは人気があります。また、キャラがはっきりしている人の方が、認知されやすく、関わりをもちやすいです。「○○坊主」などと名乗るのは定番ですが、それぞれに楽しいアイデアを持っている人が多数いますので、不慣れな方は、まずはたくさんの僧侶アカウントをフォローして観察するのが良いでしょうね。一方で、おふざけ無しの法話を、ずっと更新し続けている方もいます。これもまた凄いことで、一時的に人気を集めている人とは別な価値提供をしています。

また、視聴者、フォロワーからコメントなどのリアクションをもらった場合には、無視することなく丁寧に関わっていきましょう。対面のように表情や仕草で伝わらないので、そういうこまめなやり取りが、良質なコミュニティの基盤になります。

具体的なやり方としては、YouTube等のツールで法話を録画して流すということも一時期増えましたが、やはりここは慎重になっている人が多い印象です。気心の知れた檀家さんが集まって、今日の法話は良かったとか、難しかったとか言っているうちはいいのですが、不特定多数の人に見られてしまうと、当然のことながら考えの違う人やぶつかる人も出てきます。「ストレス社会」という言葉も定着しましたが、どこかストレスを溜めて生活している人が多いのでしょうか、ネット上でケンカを売りまくることを生きがいにしている人は想像以上に多いようで、いわゆる「仏教界隈」と呼ばれているインターネット上のつながりの中でもそれは同じことです。

少なくとも、配信を続けること自体に、ものすごいエネルギーが必要です。ネット上で目立っている僧侶の方々というのは、内容はそれぞれ異なりますが、共通して言えるのは、コンテンツの配信ペースが非常に速いことです。それに継続力も桁外れです。日記やダイエットの比ではないほど、ネットの配信は強い意志が必要ですね。

また、目立つと必ず湧いてくるアンチによるネガティブなコメントも、ある程度は覚悟しなくてはいけません。過激な発言はもちろんのこと、完璧に素晴らしい内容を提供していても、賞賛されるほどに嫉妬する人がいるものです。もし、ネット上で気分を害したことがないということでしたら、それは単に影響力がない証拠です。徹底的にやりあう方もなかにはいますが、私はそのやり方を勧めません。おかしな人に絡まれたら、とにかく距離を置くのが良いかと思います。コメントの削除、ミュート、ブロック等の機能も上手く使いながら、決して感情的に反応しないことが重要です。

時代はWeb2からWeb3になりました。ところが、YouTube、Facebook、Instagram、X(旧ツイッター)のような、いわゆるWeb2の世界から抜け出して、ブロックチェーンに活動を刻んでいるお寺は、いまのところ見当たりません。Web3は単なる技術革新ではなく、考え方の根底から変わらなくてはいけないため、なかなか世界が変わるには何かきっかけが必要になると感じています。

自立型というのがひとつのキーワードになると思いますが、この辺りが仏教のあり方と、非常に相性がよいと思っています。今後は、世にスマホが普及した二〇〇〇年前後のようなイノベーションがあと数年で起きることが期待されています。

地域と共に歴史を刻んだお寺のあり方が、今後大きく変わろうとしています。過疎や人口減で地域から人がいなくなるわけですから、その「地域」のあり方や意味さえも変わることでしょう。そうなれば「法灯の相続」は、単に伽藍や後継者の維持だけでは済まなくなります。Web3の影響を受ける世界の存在は無視できなくなるはずです。現段階では突拍子もないことに聞こえるかもしれませんが、ほんの少しだけでもその世界を知っておいて損はありません。

Web3については、後半の章で詳しく書きます。少々抽象的でわかりにくい話しにはなりますが、ご興味がありましたら、ぜひご覧ください。

未来のイメージ