『手放す生き方』 アーチャン・チャー サンガ文庫

ご紹介したい本は、20世紀を代表するタイの名僧アーチャン・チャーの法話集です。

tebanasu

僕は近年になって、ヴィパッサナー瞑想やテーラワーダ仏教との出会いがあり、日本の仏教から飛び出してずいぶん仏教に対する世界観が変わりました。テーラワーダ仏教に興味を持てば、自然と目にする機会があるでしょうアーチャン・チャーという名前。とても気になりますが、その資料は決して多くありません。そんな中、師の言葉や人柄が伝わる貴重な資料です。

メインの法話は7章からなり、法話一つを取ると1~2ページの短編になっています。テーラワーダのお家芸ともいえる巧みなたとえ話はわかりやすく、平素な言葉で語られているため、特に土台となる知識が無くても楽に読むことができると思います。
アーチャン・チャーの資料として、またはテーラワーダ仏教の教材として読まれる方が多いのかもしれませんが、はっきり言って、全く仏教なんて興味ない方が読まれても面白いんじゃないでしょうか。日々のストレス、妬み、嫉み、そういったものから解放されて少し楽になれるお話しだと思います。

僕の使い方は、一応1ページ目からボチボチ読み進めましたが、時々、目次を見て気になるタイトルがあれば飛んでみたり、日々の生活で思うことがあれば戻って読み返したりと、行ったり来たりして読んでいます。それも、改まって読書の時間なんていうのはなかなか取れないもので、いつも鞄に入れて、ちょっとした数分の待ち時間なんかに読んでいることが多いです。だから、一通り読み終えても、ずっと読みかけみたいな感じ。

法話の内容は読んでのお楽しみということで、ハードウェア的な感想を少し書きます。
僕は持ち歩きように文庫本のサイズが好きで、細切れでも読みやすい内容からしても上製本じゃなくてナイスという印象です。価格は1300円と文庫本にしてはちょっと高めですが、理由は手に取ればわかります。厚さと文章の量で、「法話単価」(という言い方もおかしいですが・・)で考えるとそんなに高くないようにも思います。
また、アマゾンのレビューには翻訳のレベルが云々と書いている方がいますが、僕の主観ではあまり関係のない部分だと思っています。英語のわかる方が洋画の吹き替え版を批判するようなもので、たしかに翻訳で印象が変わってしまうということはあるかもしれませんが、大事なことは翻訳の揚げ足取りよりも、臨場感ではないでしょうか。つまり、本を開く度に、アーチャン・チャーに遇えることが重要です。

アーチャンチャーが設立した僧院、ワット・パー・ポンにはいったことがありません。
でも、そこに行って、悩みや、愚痴をこぼせば、アーチャン・チャーが笑い飛ばしてくれそうな、そんなイメージで読める本です。

[著者]
アーチャン・チャー(Achaan Chah)

[編者]
ジャック・コーンフィールド (Jack Kornfield)
ポール・ブレイター(Paul Breiter)

[訳者]
星 飛雄馬・花輪 陽子・花輪 俊行

¥1300+税
サンガ文庫