超大作の特注念珠 その1
10ヶ月がかりで、超大作の特注念珠が完成しました。
今回はご依頼者にも協力していただきましたので、注文~完成まで、その一部始終を掲載してみます。
念珠が超大作なだけに、その解説も大作になりそうですので、数回に分けて投稿します。
まずは全体象をご覧ください!

さっそく、説明が必要ですね。僕も今まで見たことも作った事も無い形です。
各部の概要
ある程度念珠に詳しい方なら、いろいろな宗派の形が複合的になっていることに気付くと思います。
慣れない方には、いきなり専門用語を連発しても、分からなくなってしまうと思いますので、パーツ毎に、一通り説明していきます。
ベースとなっている2重の輪
見慣れていない方にはとても珍しいと思いますが、浄土宗型がベースになっています。大きな2重の輪、そして大小の金属の輪、そのしたに房がついているというスタイルです。
浄土宗では、たくさんの念仏を数えるという習慣があり、数珠の形もカウンターとして特化しています。
一般的な浄土宗型は、3万回、または6万回カウント出来るようになっています。
今回は6万回をベースにというご依頼で、大きな輪の部分については数もそのような配列になっています。
イラタカ玉
写真左側の輪の角が立った玉のことです。
修験道などで使われる、イラタカ数珠というのがあります。
漢字では、刺高、苛高、伊良太加、いろいろと表記されます。定まっていないということは、もともと当て字なのかもしれませんね。 刺高や苛高は、角ばっているものという意味があります。
実は、この、イラタカ玉を挽くのに一番苦労しました。
北海道では修験道の方からのご注文ということも、ほぼないですし、本州の方から時々修理でお預かりするくらいです。
どうやったらこの形を切り出せるのか、それを考案するところから始まりました。詳しくは後ほど制作の項にて。
みかん玉の主玉・副玉
右上の輪は、大小交互の玉になっています。
これは一般的な浄土宗の数珠もそのようになっていますが、みかん玉というリクエストでした。まん丸の玉ではなくて、みかんのように少し潰れた形です。
みかん玉は、直径を大きくしても、穴方向には短くなりますので、実用的に繰りやすく、見た目にも華やかになります。
弟子玉

薄い円盤型の玉は、一般的に平玉と呼ばれています。これが20枚。そして、対する足には、丸玉が10個。並べるとちょうど同じ長さになるように調節します。
この部分だけを見ますと、天台宗の足と同じ配列になっています。
「丸玉」といっても先ほどのみかん玉に近い形をしており、天然石の玉とちがって木の玉というのは、もともとやや潰れた形で作る習慣があります。その方が、玉同士が擦れ合う部分の接点面積が増え、欠けたりしづらいというメリットがあります。
もう一つ余計に5個だけ玉が付いた足もあります。この構造は、日蓮宗に見られます。日蓮宗の本式では10個になっていて、108数える毎に一つ繰るために付いていますが、今回は御希望に合わせて5個です。
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次回は、ご依頼内容について、詳しく見ていきましょう。