黒檀の表面仕上げの話。今日は天台平玉を使って。

念珠の材料で「黒檀(こくたん)」という時には注意が必要です。
そもそも、「え?コクタンってナンデスカ?」という方も、実は少なくないのですが、木材の一種で、非常に硬くて重く見た目にも美しいという特性があります。日本でも古くから念珠外に仏壇や家具や調度品、床柱にもありますし、楽器などその使途は結構広いジャンルにわたります。

それで、黒檀の念珠で何が問題かといいますと・・・
単に黒檀といっても、固定の一種類の木を指しているわけではなく、近縁種の総称として呼ばれています。なので、真っ黒な木というイメージだけで「黒檀の念珠」と注文すると失敗する場合があります。

念珠の世界で「コクタン」といえば、安価なものでは、さらに黒く塗装したものが出てきます。一般的なものは、艶ありでピカピカの黒に塗ってあります。パッと見は天然石の黒オニキスにも似たような感じになりますが、よく見ると塗った跡が見えて、天然石ほどつるっとした表面にはなっていません。そのほかにも、つや消しで塗ることもありますし、素挽仕上げ(無塗装でツルツルに磨く)という方法もあります。これは、塗りつぶすよりも材料の良し悪しが出ますし、手間がかかります。そしてなぜか、「縞黒檀」の場合は黙っていても素挽になることが多いです。

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不思議なもので、売り手の趣味は常連さんの趣味と同調する傾向がありますので、僕の個人的な趣味でもありますが、ピカピカに塗装した黒檀は、うちの売り上げを見る限り人気がありません。(世間的に一番流通しているのはピカピカ塗装だと思います)

今日、仕立てたばかりの大平玉を使った単念珠は、縞黒檀を一度素挽仕上げをしてから、えごま油や米ぬかロウ等で独自の仕上げにしています。石油系溶剤・化学物質は使っておらず天然成分だけで練ったワックスです。しっとり手になじむ質感で、鈍い艶は使い込むほどに黒く濃く風合いが増してきます。
正直、僕の趣味の問題なので手間の分割増料金を設定しているわけではありませんが、今のところ黒檀の仕上げでは一番気に入っている仕上げ方です。黒檀のほかには、蓮の種やクルミも、うちでは同じような方法で仕上げています。

ちなみに仕上げの話題とはそれますが、大平玉はもともと天台宗用の玉ですが、108の半分の54をつかうと、単念珠にしてもおしゃれですね。写真は五分半の平玉ですが、このサイズになるととても貫禄があります。

「黒檀」といってもいろいろですね。
木の玉もいろんな種類がありますが、ご購入を検討の際には参考にしてください。