八つ房の念珠

先日、ご注文があり納めたものです。

基本形は、浄土真宗型の通称、八寸門徒の形なのですが、真っ白で房を八つ付けたいというご要望です。
じつは、ご注文は初めてではなく、数年前にも同じ家の方がこのような形でご注文くださったことがあります。

本来であれば一つずつ房が付くはずのつゆ玉の下、蓮如結びの下からさらに倍の糸を足して編み込んで二つずつ、合計八つの房になります。

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普段はやらない形ですので、どこからどれだけ糸を足すか、ちょっと計算するのに考えてしまいました。それにしても、珍しい形で由来が良くわかりません。ご注文くださった方も、「うちは、こうなんです」というのが、おそらく一番の理由で、昔の事情は分かりません。

全く出所不明の情報ですが、一説によると、婚礼用として仏前結婚式で使われたことがあるということも聞いたことがあります。今も仏前結婚式では指輪交換ではなく、念珠授与がありますが、このような形は使われません。

仮説・・というより想像の域ですが、例えば、婚礼用として特別なものを作りたかったけど、この普及している二五房しかなかったため沢山つけてみたとか、何代か前に新宗教でこんな形で作ったあと浄土真宗に帰属したとか・・・色々考えたところで、調べようは無いんですけどね。

多くの宗派では、特に在家の方に関しては、絶対にこの形でなければ認めないという規定があることも少なく、なかなか奇抜ではありますが、ありといえばあり、というところでしょうか。

僕が死んでもこの念珠が、使われているか、どこかにしまってあれば、次に見た人はまた謎が深まって、どこの誰が作ったのかということにもなるかもしれません。

沢山のご注文をこなしていると、たまにイレギュラーというより、意外と念珠はそれぞれ個性的で、型どおりの技術では対応できないことがほとんどです。大変ですが面白いですよ。